第2章 Sketch1 --莉奈
彼女から持たされていたスマートフォンを、私は静かに窓辺に戻します。
「……史実に残る私たちの事は、八割方嘘っぱちです。 しかしそんな私たちが悪と書かれている、そのただ一点だけは真実なのです」
莉奈の瞳から大粒の滴が零れます。
そんな彼女に跪き、彼女の足の指の間に落ちた生命の水に口付けました。
その時の私にはそれが精一杯でした。
「さよなら。 莉奈」
そんな言葉と一緒に私は再び夜空へと飛び立ちました。
出来るだけ速く、遠くへ。
まるで子供の様に堪える事を知らない、彼女の慟哭から少しでも遠ざかりたかったのです。