第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1
そして、こちらを振り向いた。
一瞬、泣いている様に見えた。だが、それは限りなく死んだ表情だった。その瞳に、光はない。
「××君は……最初に私の歌を見つけてくれたんです。いつも綺麗って言ってくれました。どうして十字架持ってるの、って聞いたら『神様が居るから』って言ってました」
くしゃ、と笑う。その笑顔は、何処かぎこちない。
「でも私は最後まで信じて無かったんです。そしたらやっぱり居ませんでした。……羽京君。私はね、神様は自分だと思うんです。だって自分の人生を自分の望む姿にいちばん変えられる神様は……
私だけですから」
そう言い残すと、彼女はスタスタと寝所に入って行った。
「………………」
もしかしたら、彼女は自分しか信用していないのだろうか。だとしたら。
(それは……寂し過ぎる)
羽京の胸に、苦いものが残った。