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僕と彼女の声帯心理戦争

第1章 【プロローグ】宣戦布告


対して西園寺羽京という人間は見た限り、余りにも不器用だった。私が敢えて破壊された石像の元に通い詰めると、律儀に監視する。それも普段より近い場所で。
本当に司の信奉者で石像破壊も許容しているのなら、こんな行動は取らない筈だ。きっと心の底では破壊される石像が心底嫌なのだろう。

初めの1週間はとにかく無能っぷりを出した。
ろくに肉体労働の仕事も出来ない、家事も出来ない。とにかく力になりません、とワザとアピールして自分の武器を隠した。

その頃は自分が置かれた立ち位置が微妙な事もあり、とにかく情報が欲しかった。余りにも世界が変わりすぎて、変化に着いていけなかった。

それでもこちらの情報を下手に与えれば、変に国の中で良いように使われてしまうかもしれないーー
そう考えての無能アピールだった。そこに加えて普段から武装の様にしているゆるふわ系のキャラクターの演技。小動物系を演じた。

それらが功を奏したのか、やがて『こいつには力が無い』と判断された様で聞けばサラッと皆仕方なさそうに何でも教えてくれるようになった。

監視役の羽京君については、他の帝国人から帝国内の勢力図や彼の経歴の話を聞いて恐らくそうだろう、と目星は付けていた。

監視自体は初期に直ぐに気づいた。単純に同じ場所を短時間内にぐるぐる〜と回って、その度々の風の音の違いで居場所を察知。後は単純に『見られてる』という直感である。

羽京君は私を発見した第一人者だ。他の帝国人に会った時に彼の経歴を聞いて色々と納得がいった。海上自衛隊のソナーマンなら、確かに武力行使のこの国において『聴力』を欲しいと思った司が復活させるだろう。

夕食時には顔を突き合わせることになるので、助けてもらったから、という体裁で積極的に話しかけた。その時の様子を見て、『隠し事をしている』『恐らく彼が監視者だ』と確信を得た。

その後は帝国内をひたすら彷徨った。その時に、監視役の彼の関心を突き止めた。
そしてまだ未破壊の、今後壊されるだろうお年寄りの石像を探し予めマーキング、定期巡回。
予定より早く、石像を絶賛破壊中の司に出くわした。……偶然を装って。
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