第2章 みんなのいない朝
「行かない……よ」
安心させるように、無理矢理笑顔を浮かべてみせる。
だって私は、あなたたちの主だから。そうなんでしょう?
私の言葉を聞いて、前田が安心したように笑んだ。
ずっと見たかった笑顔だったのに、どこか歪んでいるように見えてしまうのは、夜闇で暗いせいだ。
頭をなでてやると、抱きしめる腕に一層力が入った。
痛みで顔をしかめそうになったが、なんとか堪えられた。
もう一度、風が強く吹く。
鶯丸の姿は見えなくなっていた。
許されないのだろうか。
『みんなはどこ?』
なんて思うのは。