第2章 不思議な不思議なお狐様。
そこまで言って急に神社で遊んでいた記憶が
蘇った。そうだ。私はこの神社で遊んでいた時
こんな見た目の男の子と遊んだことがある…
「小さい頃に一緒に遊んでた時の…」
「思い出してくれたのかい?ふふふ、
それはとても嬉しいことだねぇ…
それじゃあ早速嫁入りの準備に取り掛かろうか…♡」
「じゅ…準備って…」
「狐の嫁入りのことさ、聞いたことなかったかい?」
ーー狐の嫁入り。
私の村でもその言葉はあったが、
ほとんど迷信に近いとされていた。
私たちを見守ってくれている"お狐様"は
連れ去ったりなどはしないと
考えられてきていたからだ。
まさか…こんなことになるなんて。
さっき言っていた"約束"は
まさか嫁入りのことを言っているのだろうか
確かに小さい頃にしたような気が…
でもしたとしてもそんな小さい頃にした
約束なんて…
"今言えば許してもらう事はできないだろうか"
そのことを言えば
さっきまで笑顔だった彼の表情は
真顔なった。それを見た瞬間背筋が凍りついてしまった。
「神の約束は絶対だよぉ?悪い子だねぇ?」
「っは、か、神?さ、ま?」
「気がつかなかったのかい?そんな
お間抜けさんなところも可愛いけどねぇ?」
「まっ、待ってよ、それって事はつまり、
私は神様である貴方に嫁入りしなきゃいけないってこと?」
「そうだよぉ、ふふっ、あの世でずぅーっと
死ぬ事なく一緒に暮らすんだよ…」
「一生を共に暮らしましょうね。
ーーーーーゆあちゃん? 」
自分の名前を呼ばれた瞬間、
心臓をギュゥっと掴まれたような
感覚を覚えた。
今のは…なに?
あまりの恐怖に涙が止まらなくなる。
「ゆあちゃん、ゆあちゃん、、、ふふっ
君は本当に可哀想で哀れで可愛い子だね。
神様に本名を教えてしまうなんて。
囲ってほしいと言っているようなモノだよ…♡」
「名前って…な、なんで…?」
「知らなかったかい?神様が本名を
知ると、その人を縛り付けることができるんだよ…
だから一生僕といることができるね…♡」
「や、やだぁ…か、帰して…」
「それはできないな…
唯一の出口である鳥居はもう閉じてしまったしねぇ…」