第50章 最後のデート
「カノ、こっち見て」
「!」
カメラモードを起動させ、携帯をカノトに向けたまま構える。
「可愛いオマエを撮らせて」
柔らかな表情で自分を見つめているマイキーを見て、カノトはどうしても伝えたくなった。
「万次郎くん」
「ん?」
「好きです」
「!うん、オレも好きだよ。カノ。」
返ってくる言葉は分かりきっていたが、好きな人から注がれる愛はいくらでも欲しい。カノトが目を細めて嬉しそうに微笑んだ瞬間、パシャッとシャッター音が響いた。
「うん…やっぱり最高に可愛い。笑った顔が特に激カワ。早速待ち受けにしよ♪」
「(こんなにも愛されてるんだなぁ。本当に彼を好きになって良かった。)」
るんるん気分で今撮ったカノトの待ち受けを変えるマイキー。その嬉しそうな表情を見てカノトは微笑みを浮かべる。
「(私も撮っちゃえ。)」
携帯を取り出し、カメラモードを起動して、自分の写メを嬉しそうに見ているマイキーを内緒で撮った。
「あ!まだ撮っていいって言ってねぇのに!」
「万次郎くんだって内緒で私を撮るじゃないですか。なのでおあいこです。」
「どうせならカッコいいオレを撮れよ!今のオレすげー変な顔になってただろ!そんなのオマエの待ち受けに相応しくねえ!」
「別に変じゃないですよ。それに万次郎くんはいつだってカッコイイと思ってるのでこの写メでいいんです」
「…たまに照れずにそういうこと言うよなカノって」
「?」
「ま、可愛いカノジョに褒められんのは悪気しねーからいいんだけどさ。むしろもっとカッコいいって言ってほしい」
「…カッコイイです」
「そこは照れるんだ」
ふはっ、とマイキーは可笑しそうに吹き出す。カノトは頬をほんのり紅く染めながら、今撮ったマイキーの写メを嬉しそうに眺めている。
「そろそろ移動した方がいいな」
「そうですね。行きましょうか」
「手、繋ご」
「はい」
二人は指先を絡め、ギュッと繋ぐ。隣を歩くカノトを横目で見下ろすマイキーの表情から先程までの楽しさは消え、どこかすっきりしない、複雑な表情を浮かべていた。
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