第49章 手放せない愛を抱えて
「万次郎くんはちゃんと守ってくれました」
「え?」
「もし貴方が絶望の底から立ち直れず、生きる気力を失い、あの抗争場所に来ていなかったら…『最悪な未来』になっていました」
「最悪な未来?」
「東卍は天竺に敗北し、私はイザナに連れて行かれて二度と万次郎くんに会うことはできなかった」
「っ…………」
手を握ったマイキーの手がビクッと震えた。
「でも貴方が絶望の底から立ち直り、あの場所に駆け付けてくれたから、私は今、万次郎くんの傍にいるんです」
「オレが…立ち直ったから…」
「あの場に万次郎くんが現れた時、どれだけ私が安心したか。嬉しかったか。今でも鮮明に覚えてます。やっぱり貴方は私のヒーローです」
握り締めたマイキーの手を、痣のない方の頬に引き寄せ、嬉しそうに微笑むカノト。
「万次郎くんは私を守ってくれたんですよ」
「カノ…」
マイキーの瞳が泣きそうに揺れた。そしてそのままカノトを優しく抱きしめる。
「オマエがイザナに連れて行かれたって想像しただけで背筋がぞっとする。最悪な未来にならなくて良かった…」
「はい」
「頑張ってくれてありがとな、カノ。」
「それは私の台詞です。前に進むことを諦めずに、私のところに戻ってきてくれてありがとうございます」
「オマエはオレの光だからな。ちゃんとオマエが照らしてくれた道を辿って行けた。カノがずっと、オレの手を離さずにいてくれたからだよ」
マイキーが道を踏み外さないように、ずっと手を繋いで『正しい道』を一緒に歩んできた。もし彼が独りになって、帰る場所を見失ったとしても、カノが光となって、マイキーを明るい方へと導いていた。
「(私は万次郎くんの『帰る場所』。進む道を迷った時に"正しい道"に引き戻す『光』。これからも手を繋いで、二人で一緒に未来を歩んでいくんだ。)」
「マドカさんに殺されるな。オマエを死んでも守るって約束したのに、怪我させちまった」
「大丈夫ですよ。兄さんならきっと許してくれます。あの人も不良の世界がどういう場所で、戦いというものがどんなものかも理解してますから」
「そっか…」
マイキーは小さく笑み、身体を離した。
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