第48章 打ち砕かれた野望
「テメェなんか嫌いだ、バァーカ。」
「!」
目を丸くするカノトから顔を逸らした後、イザナは空を仰ぎ、マイキーに向けて言葉を伝える。
「マイキー…オマエは、オレを"救いたい"って言ったか?」
「兄弟なら当然だ…もう喋るなイザナ…」
心配するマイキーに、イザナは苦しそうに呼吸をしながら、自身の事について語り始めた。
「…ある日、オレを捨てた母と…偶然会った」
「?」
『母さん…なんでオレの事捨てたの?』
『ちっ、メンドくせぇ』
『え?』
『アンタはアタシの子じゃないの』
『え?』
『アンタは前の旦那がフィリピンの女と作った連れ子。わかる?アンタは他所の子、血が繋がってないんだよ』
「イザナ…オマエ…」
「え?それって」
「そうだ…オレは真一郎ともオマエともエマとも兄弟なんかじゃない…誰とも血が繋がってないんだよ」
その衝撃的な事実にカノト達は驚きを隠せなかった。
「(イザナが…赤の他人?佐野家の誰とも血が繋がってないなんて…。)」
ずっと自分は佐野家の一員だと思ってた。そう信じて、今まで生きてきた。でも母親から告げられた真実は…血の繋がりを信じてきたイザナにとって最も残酷で、精神的にも強い衝撃を与えた。
「なぁ?マイキー…オレが救えるか?救いようがねぇだろ?なあ?……、…エ…マ…」
眉を下げ、涙を浮かべて悲しそうに笑うイザナは最期にエマの名前を言い残し、目を開いたまま、息絶えた。
「…イザナ?」
身を起こし、震える声でイザナの名を呼ぶ鶴蝶。
「…オイ!!返事しろよ!!オイ!!オイ!!!イザナ!!」
「カクちゃん…」
「イザナ!!!」
腹這いになってイザナの近くまで移動し、隣に並んでドサッと寝転がる。冷たくなった手をギュッと握って、イザナを見た。
「イザナ…寂しい思いはさせねぇよ…オレも…今…そっち逝くから…」
「(また…目の前で人が死ぬ。この姿じゃ助ける事も出来ないなんて…腹が立つ。)」
悔しそうな顔で掌を強く握り締める。
「オレらは上手に生きられなかったな…」
「カクちゃん…!!」
その時、上から冷たいものが降り注ぎ、ふと空を見上げる。
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