第48章 打ち砕かれた野望
「イザナ!!!」
鶴蝶が強く肩を掴む。
「わかるだろ!?幹部共(コイツら)じゃあオレには勝てねぇ!!」
「…どけよ下僕ぅ。オレはまだまだやれんだよぉぉ」
「天竺の負けだイザナ!!!」
「うるせぇえええぇぇ!!」
目尻に涙を浮かべながら、先程よりも声を張って叫ぶ鶴蝶。まるで現実を受け入れろとでも言うように強く訴え掛ける。だがその現実すらやっぱり認められないイザナは怒りを抑えられず、声を荒らげた。
その時、鶴蝶の後ろで稀咲が銃を構えている姿に気付いたカノトはハッとして咄嗟に叫ぶ。
「撃つな稀咲…!!」
ドンッ
その制止も虚しく、稀咲は引き金を引いた。発砲された銃弾は鶴蝶の右胸を貫き、その返り血がイザナの顔にピシャッと飛び散る。
「カクちゃん!!!」
ドサッと膝から地面に崩れ落ちた鶴蝶は、口から血を吐き出し、苦しそうに息をする。その様子を間近で見ていたイザナは鶴蝶が撃たれた事にショックを受け、目を見開いた。
「ジャマなんだよテメェは」
タケミチだけじゃなく、鶴蝶にまで計画を潰された事に腹を立てる稀咲は憎らしげな顔で睨みを利かせている。
「何度も何度も繰り返し…考え抜いた計画も花垣に潰された。マイキーが使えなくなった今、オレはイザナを媒体にするしかなくなった。鶴蝶、テメェはジャマなんだよ」
「うぉぁああ!!」
「死ね」
力を振り絞った鶴蝶はバッと立ち上がり、稀咲に向かって走る。その前に稀咲が引き金を引き、3発の銃弾が発車された。
「(鶴蝶に当たる…!!)」
真っ直ぐに伸びる銃弾は鶴蝶に当たるかと思いきや、イザナが鶴蝶を突き飛ばし、自分が身代わりとなって、3発の銃弾を体に受ける。
「え!!?」
「っ!?」
「イザナ!!?」
まさかの行動に驚きを隠せない者が多かった。イザナと鶴蝶は地面に倒れ込む。
「なんでっ…なんでテメェが…下僕を庇う!!?」
「(あれだけ仲間を捨て駒扱いしていたイザナが…身を呈して鶴蝶を守った…?)」
「テメェ…何やってんだよ…」
「…ったくよ、下僕のクセに手がかかる…体が勝手に動いちまった」
予期せぬ事態に腰が抜けた稀咲は、目を見開いたまま、過呼吸を起こす。
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