第47章 12年後に死んでしまう君へ
「はっ!いいなその苦痛な顔!」
「よーし!そのまま押さえとけ…よっ!!」
ゴッ
「かはっ……!?」
手加減のない強烈なパンチが腹部にめり込み、急な吐き気と痛みに襲われ、口を開けて目を見開いた。
「う……ぐ……」
「ハハ!いい気味だな!」
「散々馬鹿にされたんだ!この程度で根を上げんじゃねーぞ?」
「ケホ…ハァ…ハァ…」
ニヤつく男達を苛立たしげに睨む。口の端からは涎が垂れ、拭こうにも首を締め付けられて苦しい為、それも叶わない。
「やっぱ次は顔だろ」
「美形が不細工になっちまうなぁ?」
男達は見下すようにしてクスクスと嘲笑う。
「(せめて首の拘束さえ外れれば…)」
「じゃあ行くぞオラァ!!」
目の前で振り下ろされた拳がカノトの頬を殴り付けた。
ゴッ
「っ………!!」
強烈な痛みで一瞬意識が飛びそうになる。その時に口の中を切ってしまい、赤い血がツゥー…っと口の端を流れた。
「カノト!!」
遠くの方からタケミチの焦った声が聞こえる。カノトはその呼び掛けに答えず、首を横に向けたまま、黙り込んでいた。
「お?気絶しちまったかァ?」
「嘘だろ?たった一発でトぶか?」
「あれだけ生意気な口利いてたクセにつまんねーな!もっと楽しませろよクソガキ!」
「……………」
ゲラゲラと下品に笑う男達。タケミチは助けに向かおうとするが、鶴蝶に邪魔をされ、駆け付けることが出来なかった。
「おい…まだ寝るには早すぎんぞ」
「テメェにはまだまだ遊んでもらわねぇとな」
「目覚めの一発、入れてやるよ!」
両手をポキポキと鳴らしながらニヤつく男。タケミチは鶴蝶から視線を外さず、大声でカノトに向かって叫んだ。
「しっかりしろ勇者様!!まだ頑張れんだろ!?オレも諦めねぇからオマエも諦めんな!!」
英雄から勇者に送られる激励の言葉。それを聞き届けたカノトがピクッと小さく反応する。
「もしかして勇者ってコイツのこと?」
「つか何だよ勇者って!」
「厨二病でも患ってんのか〜?」
「ウケんだけど!」
馬鹿にするように男達が嘲り笑う。
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