第5章 ミッション失敗…?
「ど、どうしました?」
「今の声、めちゃくちゃ“きた”」
「え?」
「すげーえっち。」
「っ………!!?」
覆った手から覗いたマイキーの顔がカノトと同じく真っ赤だった。
「あんまオレを煽んないで」
「え?どういう…」
「オマエが男だってことも忘れて今ここでちゅーしたくなる」
「っ…………」
触れた指先が熱を帯びて熱い。お互いに顔を赤くして距離も近くて、マイキーからそんな事を言われて。カノトは恥ずかしさで言葉を失いかける。
「あー…うー…えっと…」
「それとも本当にちゅーする?」
ぐっと顔を近づけて笑うマイキー。
「ま、マイキーくん!」
「ホント女みてぇな顔…」
「ちょ、ちょっと待っ…」
あと数cmで触れ合う唇に───。
「待った!!」
「むぐっ」
カノトは両手でマイキーの口を押さえる。ぱちくりと目を見開いたマイキーだが、むっとした顔でカノトを見ている。
「もう!何でキスしようとするんです…!」
「オマエがえろい声出すのが悪いんじゃん。オレ悪くねーし」
ぷいっと顔を背けた。
「(拗ねた…!!)」
「拒まれてすげーショック」
「それはマイキーくんが急にキスしようとするからじゃないですか…」
「オレとキスすんの嫌なんだ」
「(あぁ…完璧に拗ねてる。)」
「ねぇ、オレとのキス、きもちーよ?」
「ダメなものはダメです」
「…一回だけ。ちゅーしよ。」
「可愛く言ってもダメです」
「…どうしても?」
「どうしても」
「じゃあ唇にはしないから、その代わり耳にキスさせて」
「え?耳?」
「さっき息吹きかけた方の耳」
「……………」
マイキーの我儘は今に始まった事じゃない。いつかの試着室のように断ればそこから動かないだろう。
「…本当に耳に一回だけですよ?」
「していいの?」
「ダメって言ったら諦めてくれますか?」
「ヤダ。」
「だと思ったので…どうぞ」
「カノは優しいなぁ」
「ほ、本当に1回だけですからね?」
「うん、わかってる」
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