第45章 願う声は届かない
「そうだ。だがまだ"最後の仕上げ"が残ってる」
「最後の仕上げ?」
「マイキーの最大の弱点であり、命を掛けてでも守り抜きたい存在…宮村心叶都。アイツも花垣と一緒にオレの計画を潰し、花垣に似て"諦める事"を知らねぇムカつく奴だ」
「…カノトか」
「アイツがいることでマイキーは『正しい道』を歩んでる。だが、果たしてその道は本当に正しいのか?アイツが連れて行こうとしている先は、光も届かない暗闇の底なんじゃないか?」
「……………」
「だからオレが引き離してやる。マイキーを今歩んでいる"道"から外させる。」
稀咲は血のハロウィンで見かけて以来、カノトのことが気に入らなかった。どんなに追い込まれても決して諦めない強さに苛立ちを募らせる事が多かった。
「そうすればアイツはもうマイキーを導けない。『正しい道』が"正しい"なんてどうして分かる?マイキーの歩む道はオレが正す。花垣同様に目障りなアイツは最後に消してやる」
強い恨みを孕んだ目付きで、稀咲はギリ…ッと歯を噛み締める。
「宮村を消せばマイキーは完全に壊れる。オレの邪魔は二度とさせねえ」
「…カノトの事は分かった。ただ一つわかんねぇのは、リスクを冒してまで自分の手を汚した理由だ。簡単に人を使って殺しができるのに、何がオマエをつき動かした?」
「……………」
稀咲の視線がイザナに向けられる。
「実の妹殺した相手にテメェの興味はそれだけか?」
「実の妹…?施設で過ごした10年…訪ねてきたのは佐野真一郎だけだった。空っぽのオレを埋めたのは、あの人の愛だけだ」
「……………」
「稀咲…オレのキョーミはね、佐野真一郎の愛したモノ全て。オマエの悪意はオレの心を満たしてくれる。だから利用されてやる。」
真一郎に心酔しきっているイザナは、街を眺めながら言う。
「今のマイキーはオレと同じ空虚の極みだ。オレがマイキーを飼い慣らしてやる。時間をかけてゆっくりと。稀咲、東卍はオマエのモノだ」
「……………」
イザナから視線を外し、稀咲は街を凝視める。
「(さあ、どうする?"ヒーロー"。)」
next…