第43章 執着は時として狂愛に
「(まず仕掛けて来るなら正面の奴。他の二人と違って横柄な態度が目立つ。こういう奴は自分の力を必要に見せたがる。)」
すると予想通り、正面にいた少年が真っ先に突っ込んできた。拳を握った腕を振り上げ、カノトの顔面目掛けて振り下ろす。
「おらぁ!!」
「(行動読め過ぎだし、隙アリ過ぎ。)」
シュッと放たれた拳を見極め、タイミングよく、首を横に傾けて躱す。少年の渾身の一撃は呆気なく空振る。
「なっ……!?」
「ワンパターン過ぎなんだよ」
まさか躱されると思わなかったのか、少年は驚いた顔を浮かべる。"つまんない喧嘩だな…"と呆れて溜息を吐き捨てたカノトは、片足を少年の顎下に向けて蹴り上げた。
ガッ!
見事クリーンヒットした少年の体は浮き上がり、そのまま背中から地面にドサッと倒れ込み、気絶した。
「は!?ちょ、おい…!!」
「大丈夫かよ!?しっかりしろって!!」
慌てて駆け寄ると白目を剥いて気絶している少年を見て、二人はサァー…っと顔を青ざめる。
「き、気絶…してる…」
「マジかよ…たった一蹴りだぞ!?」
「クソ!どうなってんだよ!」
「アイツ強過ぎだろ…!」
「本気出してないのに一撃で気絶しちゃうなんて情けないな。あれだけ啖呵切ったんだからもう少し楽しませてよ」
二人は悔しそうにグッと顔をしかめる。
「誰だよ…"やる前から勝ったみたいなもん"とか余裕ぶっこいてた奴!」
「おめぇだよ!!つか誰だよ、"年上ナメてると痛い目見る"って言った奴!俺達の方が痛い目見てんじゃん!」
「それはお前だよ!!」
「(コイツらコントでもしてんの?)」
「…このままだと確実に惨めな姿晒すな。チッ、コイツはコイツで何の役にも立たねーし。気絶すんなら真正面から行くんじゃねえよバカが!」
「猫守りながら足技だけで戦ってンのに息一つ乱してねぇとかバケモンかよ。あの余裕そうな態度スゲームカつく!」
「ねぇ次、早く来なよ」
「っ、うるせーな!!そう急かさなくてもテメェなんか俺達がボッコボコにしてやるわ!!」
「テメェが負けたら一生俺ら専用の奴隷にしてやるからな!!覚悟しとけよ!!」
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