第41章 絶対的な『王』の名は
「あのクソ王…ハァ…ハァ…腕が使い物に…ならなかったら…ハァ…どうして…くれんだ…ぅ…こっちの手で…患者の採血…ハァ…してんだよ…次会ったら…マジ許さん…っ」
肩から溢れ出る血が地面に赤い跡を残す。痛みで動けずにいるとタケミチが空を仰ぎながら悔しげに言った。
「ナオト、すまねぇ」
「…タケミチ君。君を…この現代で…初めて見つけた時、絶望しました」
「……え?」
「こんな…こんな情けなさそうな奴に、全てを託さないといけないのか…って。こんな奴の…どこに、姉さんは惚れたのか…不思議でした」
ナオトは朦朧とする意識の中、まるで最期の言葉を伝えるかのようにタケミチに語りかける。
「何度も失敗する君を見てて、今は、こう思う。ヒーローって、こういう人なんだ…って。何度失敗しても諦めない」
「…ナオト、くん」
助からないと悟ったのか、別れの言葉を口にするナオトを見て、カノの目に涙が浮かぶ。
「…タケミチ君」
ナオトが顔を横に向け、タケミチを見る。
「君は…僕の誇りです」
「ナオト…」
「最後の握手です」
力の入らない手をタケミチに差し出す。
「タケミチ君、カノさん。やっぱり死ぬのは怖いですね」
そう言って笑うナオト。カノは俯せになり、動かない右腕を地面に放り、悔しそうに顔をしかめさせながら涙目で言う。
「ご、めん…ね、ごめんね…ナオトくん…私、看護師…なのに…救うべき命が目の前にあるのに…何も、できな…くて…私…君の命を…救えない…っ!」
「…いいんです、カノさん。その心遣いだけで…ボクはとても嬉しい」
「っ…………」
にこりと苦しげに笑うナオトを見たら、自分に対する悔しさと苛立ちで涙が溢れた。
「さぁ、ボクの…息があるうちに」
「(っ、最後じゃないよナオトくん。最後にさせない…。私達は絶対に──諦めない!!!)」
タケミチがナオトと握手を交わすと、頭の中でチリン…と鈴の音が聞こえ、カノの意識はそこで途絶えた…。
next…