第41章 絶対的な『王』の名は
「…名前もつまんねーと思ったけど、オマエ自身もつまんねーな。もういいわオマエ。クソつまんねーから、死ねよ」
初めて会った時と同じような冷たい目を宿したイザナは持っている銃をカノに向けた。タケミチとナオトが驚いた顔を見せる。
「…カノさん!!」
「や…めろ!!撃つな…!!」
「……………」
殺されると云うのに、カノは妙に冷静だった。普通銃を向けられれば、誰だって取り乱し、その顔が恐怖に染まる。だがカノはじっとイザナを見たまま、静かに口を開いた。
「…これも前に言ったと思うけど」
「あ?」
「殺したら夢に化けて出て呪ってやる。地獄の底に引きずり込んで、恐怖と痛みを永遠に与え続けてやる。絶対に君達を許さない」
怒りや憎しみが混ざり合い、それが低い声に出る。ギロッと鋭い眼光で睨みつけるカノに狙いを定め、イザナは無表情で引き金を引いた。
ドンッ
「カノちゃん…!!」
「っ、う"、ぁ"……!」
心臓を撃ち抜かれるかと思えば、イザナが狙ったのは右肩だった。想像以上の激痛に顔を歪め、じわりと血に染まる肩を片方の手で押さえながら、バランスを崩してドサッと地面に倒れ込んだ。
「ハァ…ハァ…ッ」
撃たれた肩が熱い!!
痛みがずっと続いて治まらない…!!
てっきり一思いに殺すと思ったのに!!
「悪ぃ悪ぃ、"殺し損ねちまった"。本当は一思いに殺すハズだったのに狙いが定まんなくて肩に当てちまった」
「(コイツ絶対わざとだろ…!)」
「ザンネンだったな、一思いに死ねなくて」
嘲笑うようにイザナが言う。
「オマエは永遠の痛みと恐怖に怯えながら、ゆっくりと近付く死を味わえ。そこにいる二人と一緒にな」
「ハァ…ハァ…ハァ…」
横向きに倒れたまま、撃たれた箇所を血に染まる手で押さえる。
「…あっけねぇモンだな…」
そして稀咲達はその場から立ち去った。
「ゲホ、ゲホ!ハァ…カノ…ちゃん、大丈夫…か…!?ゲホッ、生きてるか…!?」
「ぅ…痛い、けど…ハァ…死んでは、ない、よ…」
息をするのが苦しそうに、顔を歪めながらカノは返事をする。
.