第41章 絶対的な『王』の名は
「オススメって言うから多少は期待してやったのに案外フツーの味だな。まぁ不味くはねーから許すけど」
「…3個も奢らせておいて文句言わないでくれます?ぶん殴りますよ」
「オマエじゃ俺を殴れねーよ」
既に2個目のたい焼きを頭の方からかぶりついたイザナの態度にイラッとした。
前にマイキーと一緒に来た美味しいたい焼き屋にイザナを連れて行った。店員にあんことカスタードを注文したら横から『チョコも忘れんじゃねーぞ』と当たり前のように追加注文され、仕方なく3個も奢る羽目になった。
「…美味しいですか?」
「何、食いてえの?」
「くれるんですか」
「食いたきゃ自分の金で買って来いよ」
「……………」
ピキっと怒りマークを浮かべる。
「(そのたい焼きも私のお金で払ったんですけど!?)」
殴りそうになる拳を何とか抑え込み、恨めしげにイザナを睨む。
「たいやき君てさ、最後どうなるんだっけ?」
「は?何ですか急に。たいやき君?」
「オマエ知ってる?」
「…確か、サメに追われたり、難破船に住んだりした後、浜辺で釣りをしていた見知らぬおじさんに釣られて最後は食べられちゃったんじゃないですか」
「ふーん」
「(ふーんって…聞いておいてそれだけ!?もっと他に言うことないの!?)」
大して興味も無さそうなイザナに又もや苛立ちが浮かぶ。
「あの…もう奢ったんですから、僕に用はないですよね?帰ってもいいですか?」
「アイスも奢れ」
たい焼きを口に頬張りながら、近くに停めてあるワゴンのアイスクリーム屋をビシッと指差す。
「こんな寒い日にアイス?というかまだたい焼き口に含んでるじゃないですか」
「寒いからってアイス食べちゃダメなんてルールねぇだろ。それにたい焼きならもう食った」
ぱくんっと口に入れていた最後のたい焼きをモグモグと食べ、茶色の紙袋をグシャグシャと両手で丸めた後、ゴミ箱に捨てた。
「どんだけたかる気ですか」
「コレ奢ってくれたら解放してやる」
「喜んで奢らせて頂きます!」
やっと解放してもらえる!
この態度のデカい王様から!
カノトはルンルン気分でイザナにアイスを奢る事にした。
.