第41章 絶対的な『王』の名は
───横浜。
「気圧、重いなぁ。こういう日はなんかあるって思ってたらさぁ、オマエが訪ねてきたんだ。稀咲。」
"初代 天竺 横浜"の刺繍が入った赤い詰襟の特攻服に身を包んだ一人の少年がいた。
「言いたい事わかる?乱気流が来た。」
横浜 "天竺" 総長
黒川イザナ
「なんで"ウチに入る"気になった?」
「オレなりの"リベンジ"ってトコですかね…」
その答えにイザナはニコっと笑う。耳に付いている花札のピアスがカランと揺れた。
「オマエは?ただ稀咲に着いて来ただけか?」
イザナの視線が稀咲の後ろに立つ半間に向けられる。天竺に入る気になった理由を聞かれると、半間は口の端を歪めて笑った。
「天竺に入れば東卍とヤるんだろ?なら勇者チャンにまた会える。そろそろ捕まってほしいんだよなぁ」
「?」
不気味に笑う半間の言葉にイザナは疑問符を浮かべる。
「だから逃げんなよ、勇者チャン。」
ボソリと小さく呟かれた独り言。その瞳の奥に宿るのは強い執着心と狂気だった。
東卍史上最大にして
"最後"の抗争が
始まる────。
✤ ✤ ✤
「っ…………」
スイーツを買いにコンビニに向かう途中、急な寒気に襲われ、体を身震いさせた。
「(なんだろう…嫌な予感がする。)」
不安に駆られたその時、ポケットに入れていた携帯がメロディーを奏でて鳴った。
「タケミチくん?」
相手を確認するとタケミチからだった。ピッと通話ボタンを押し、耳に当てる。
「もしもし?」
《今ドコにいる!?》
「…何処って、外だよ。スイーツ買いにコンビニに向かって歩いてる所。」
《呑気にスイーツ買いに行ってる場合じゃないよカノちゃん!!緊急事態なんだよ…!!》
電話越しから聞こえたタケミチの声は、何故か焦っている様子だった。走っている最中なのか、荒い息遣いと緊迫した空気が伝わってきて、怪訝そうな表情を浮かべたカノトは足を止め、聞き返す。
「緊急事態って何かあったの?というかタケミチくん、凄いハァハァ言ってない?」
《逃げてる途中だからな…!!》
「え?逃げてるって…どういうこと?」
.