第39章 不器用な友達
「アンタ…外見に似合わず辛辣ね」
「でも前に言いましたよね?碓氷さんは誤解を招きやすいだけだって。本当は優しい人だってこと、私は知ってます」
「何がどう…優しいっていうの…?」
『はぁ?何がどう優しいっていうの?』
同じ質問をしてみた。あの時に比べて強気な言い方じゃない。少し戸惑うような弱々しい声で聞けば、カノトは笑う。
「貴女は人の為に動ける人です。初めて会った時、身も知らぬ私のことを助けてくれた。迷子になった時も同じです。困ってる私を見捨てずに案内をしてくれた。だから貴女は優しい人なんです」
「………。そう…アンタにはそう見えてるのね、アタシの優しさが。…後悔しない?アタシがアンタの友達になって」
「?何で後悔するんです?碓氷さんと友達になれたら楽しそうって言ったじゃないですか」
それでも海凪はまだ決断が下せず、助けを求めるようにドラケンとマイキーに視線を移す。
「なに迷ってんだよ。お前の素直な気持ちを伝えればいい。カノはお前の言葉を拒絶したりしねぇから」
「ケンちゃん…」
「こんな格好してるから女の友達がいねーんだ。だから海凪、コイツの望み叶えてやってよ」
「…万次郎」
二人に背中を押された海凪はカノトに視線を戻し、自分の気持ちを素直に伝える。
「それがアンタの望みなら…」
スッと手を差し出す。
「友達になってあげる」
「!」
「だから『碓氷さん』じゃなくて、『海凪』でいいわ。その、友達…なんだから───カノ……」
羞恥心から微かに頬を紅く染め、視線を逸らす海凪にぶっきらぼうに名前を呼ばれた。
カノトは驚いたが、すぐに嬉しさが込み上げ、差し出された手を両手でギュッと握り、胸元に引き寄せた。
「うん…うんっ!私と友達になって!海凪ちゃん!」
「…しょうがないわね」
「わあー凄く嬉しい!友達になってくれてありがとう!これからよろしくね!」
「(…万次郎が惚れ込むのも分かる。この子は、とても優しくて、握る手が温かくて、キラキラが溢れてる。アタシには勿体ないくらいの友達だわ。)」
にへぇっと嬉しそうに笑うカノトに海凪も微かに笑みを零す。
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