第38章 君の代わりなんて誰ひとり
「はぁ!?そう思ってるのは悠生くんだけだよ!!私は君と愛し合った覚えなんてない!!」
「そう言っていられるのも最初の内だよ。俺がいなければ生きていけないほど、俺を必要とさせるからね。俺を愛したのは間違いなんかじゃなかったって君に理解させる」
「ふざけないで!!」
「あぁ、怒った顔も可愛い。結婚して二人で暮らし始めたら、もっともっと色んな表情の君が見られるんだな。今から楽しみで仕方ないよ…!」
「(ダメだ…話が噛み合わない。)」
興奮するように息を荒くさせ、恍惚とした目でカノトを見る悠生に嫌悪感を抱き、蔑んだ瞳で見据える。
「(悠生くんと二人はまずい。何故か美代子さんも留守だし、家には誰もいない。悠生くんの目…渦巻きみたいにグルグルしてるし、浮かべる笑みも恐怖感を煽られる。)」
そこでふとある事に気付いた。
「ねぇ、アルバムから私の写真だけを抜いたのって、もしかして悠生くん…?」
「あぁうん。勝手に貰うのは悪いと思ったんだけど、夫婦なんだから別にいいよね?俺のコレクションにしようと思うんだ」
「返して」
「あ、そうだ!一緒に暮らし始めたらさ、コルクボード買って、そこに二人の思い出の写真をたくさん貼っていこうか。これから君と過ごせる思い出が増えるなんて嬉しいよ」
「っ、返してって言ってるの…!!」
勝手に一人で喋り続け、こっちの話をまるで聞かない悠生の身勝手さに苛立ち、叫んだ。
「俺と結婚したことを認めるなら返すよ」
「!」
「"私は悠生くんと結婚します"って俺の前でちゃんと言ってくれたら写真は返す。簡単だろ?」
"誰が言うか!!"と憤怒の感情を顕にする。
「お断りだよ」
「……………」
「私は君と結婚する気はない。そろそろ本気で目を覚まさないと、後悔するのは君だよ」
「まだ尚登さんが俺を騙してるって疑ってんの?それはありえないって言ったじゃん。尚登さんは俺を君の婚約者に選んでくれた良い人だろ?あの人の言う通りにしておけば全て上手くいくんだ」
「随分とおじい様を信頼してるんだね。その信頼は無いのも同然なのにさ」
「どういう意味?」
「おじい様は君に一切興味なんてないよ」
ハッキリと断言した。
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