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BRAVE You’re HERO【東リべ】

第38章 君の代わりなんて誰ひとり



マイキーの傍から離れる事を決意したカノトは、ふらつく足で実家に着いた。



「(これで良かったんだ。マイキーくんは海凪ちゃんといた方が幸せになれる。彼の幸せを私が邪魔する権利なんてどこにもない。ネックレスは置いてきた。これでもう私とマイキーくんを繋ぐ証は何もなくなった。)」



昭和を感じさせる和風門を潜り、飛び石を踏んで玄関に入り、相変わらず静けさが流れている廊下を突き進む。



「("絶対に離れない"って約束…こんなに呆気なく破られちゃうんだな。薬指の誓いも…今じゃ無意味になった。)」



そして応接間に辿り着く。



「(これでマイキーくんとは終わり。連絡先も後で消さなきゃ。マイキーくんから貰った物も全部。そうじゃないと…完全に繋がりを断たないと、私がいつまでも諦められない。)」



『好きだよ、カノ』



記憶の中のマイキーが笑顔で手を差し伸べる。大好きな人の大好きな笑顔。いつもなら迷わず温かなその手を取っていた。



「…私も、"好きでした"よ」



けれど目を瞑り、拒絶するように差し伸べる手を振り払う。記憶の中のマイキーは消滅した。



「(さぁ、戦おう。)」



スッと気持ちを切り替え、覚悟を決めたカノトは襖に手を掛け、横に引いた。



「!」



てっきり尚登と零夜がいるんだと思ったが、そこに二人の姿はない。代わりに畳の上にぽつんと寂しげに置かれた一冊のアルバムを見つける。



「何でこんなところに…?」



歩み寄ってアルバムを拾い、ページを開く。



「子供の頃の写真…」



最初のページに貼られていたのは家族写真だった。それには見覚えがあり、カノトの部屋に落ちていた写真と全く同じ物だった。



只唯一違うのは、父親の顔が黒く塗り潰されていないことだ。



「(この日はお母さんの体調が良かったから、わざわざ専属のカメラマンを呼んで撮ったんだっけ。でも…この人と一緒に撮るのが怖くて、兄さんに手を繋いでもらった。)」



他のページを捲っていけば、幼稚園のお遊戯会や遠足、小学校の運動会や学習発表会などの行事が収められたカノトとマドカの写真が収められていた。



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