第37章 オレの『帰る場所』
「カノもコイツのことがめちゃくちゃ大好きだから、お前が毎日見舞いに来て嫉妬しない訳じゃねーんだ」
「……………」
海凪はカフェでのカノトとの会話を思い出す。
『アンタの存在が万次郎の幸せを壊す可能性があるからよ』
『アンタが万次郎を恋人から奪おうとしてるんじゃないの?』
「(じゃああの時、万次郎の恋人であることを隠して、アタシに話を合わせてたの…?)」
『僕はマイキーくんの幸せを壊しません。彼の幸せを守る為に一緒にいます』
『ダメ…盗らないで』
『っ違う!!奪おうとなんかしてない!!だってマイキーくんが好きなのは───!!』
「……………」
『マイキーくんとあまり仲良くしないでください。彼を想う彼女のためにも』
女であることを知った海凪は驚きを隠せず、大きな目を見開かせ、口を手で覆った。
「ケンちゃん…」
「!」
「後でアイツの連絡先教えて」
「海凪…」
「伝えなくちゃいえないことがある」
「ああ」
ドラケンは柔らかな表情で微笑んだ。
「万次郎、アンタには素敵な恋人がいるわ」
「!」
「こっちが引いちゃうくらいベタ惚れで、世界一可愛いって自慢するほどの彼女よ。いつも惚気が尽きなくて、愛が変な方向に歪んでてちょっと心配になるけど…それでもアンタのことを誰よりも想ってくれる、大切な恋人よ」
「オレが誰よりも大切に思ってんのはオマ…」
「ダメよ。その続きを口にしちゃ。」
その先は言わせまいと、口調を強めて海凪はピシャリと言い切る。
「…何でだよ」
「万次郎、絶対に後悔するから」
「後悔?オレが?」
「絶対するな」
「あそこまで溺愛してるんだもの」
「何だよ二人して。別にアイツがオレの恋人だからって何かが変わるわけでもねーだろ?」
「変わるんだよ」
「!」
「お前、カノがいなくなっちまったら、生きていけねーだろ。もし目の前から消えちまったら…そう考えるだけで怖いって言ってたもんな」
「…言ってねーけど」
「記憶を無くす前のお前は言ってたんだよ」
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