• テキストサイズ

BRAVE You’re HERO【東リべ】

第36章 気付けない狂気に支配されて



翌日、和菓子屋で知り合った尚登から"これから家に来ないか?"という誘いの連絡があり、"昨日の今日で!?"と電話越しで驚いた悠生だったが、教えてもらった住所を頼りに着いた場所を見て、更に驚いた顔を浮かべる。



「…何だこの昭和感満載の家。テレビでしか見たことないし…。まさかあのじいさん実は金持ちだったりすんのかな」



「吾妻悠生様ですか?」



「!」



唖然とした表情で江戸時代に出てくるような日本家屋に見とれていると、中から優しげな雰囲気を纏った年配の女性が悠生を出迎えた。



「吾妻…悠生です」



「話は大旦那様から伺っております。ご案内致しますのでどうぞ中へお入りください」



「("大旦那様"!?あのじいさんが!?)」



美代子の後に続き、家の敷地内に足を踏み入れると、外とは違った雰囲気を感じ取る。



「(まるで時間が巻き戻ったみたいだ。この家に入る前は"現代"って感じがしたのに、門を潜った瞬間、別世界に来たような感覚がした…。)」



「どうかなさいました?」



「こういう家の造りを見るのは初めてで、少し圧巻されてます」



「そうでしたか。この日本家屋は大旦那様──尚登様のお父様が造られたんです。まるで昭和の時代にいるみたいでしょう?」



美代子は振り返り、ふふっと控えめに笑う。悠生もそれに笑顔で返し、砂利を敷き詰めた飛び石の上を歩いて行く。



「吾妻様も…候補に選ばれたのですか?」



「候補?何のです?」



「いえ…違うのならいいんです。気にしないでください」



「?」



悲しい表情を見せる美代子の意味深な発言にハテナを頭に浮かべたが、特に気にする事もなかった。そして長廊下を進み、応接間に到着する。



「(あ、そういえば…表札見なかったな。じいさんの名前と住所しか教えてもらってないし…)」



そんな事を考えていると美代子が床に正座し、襖に手を掛けた。



「失礼致します。吾妻様がご到着なされました」



「通せ」



中から男の声がし、美代子が襖を開ける。畳が敷いてある少し広めの部屋に通された悠生が最初に感じたのは"ピリついた冷たい空気"だった。



「(なんだ…この感じ。寒くもないのに冷たい空気が流れてる。それに…変な緊張までしてきた。)」



.
/ 1256ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp