第35章 壊れた愛の絆
「もし良ければ儂の家に招待させてくれ。そこで孫娘の写真でも見せながらゆっくり話でもしよう」
「……………」
「それとも吾妻君はこんなジジイの話し相手はつまらんだろうか?」
「いえ、そんなことないです。ぜひ話を聞かせてください」
「そうか!ありがとう!…時に、君は恋人はいるかね?」
「恋人?」
「ほら、儂の孫娘も女の子だからな。君の恋人を嫉妬させてしまうかもしれんだろう?それ程までにうちの孫娘は美人なのだよ」
「…残念ながらいませんよ」
「そうかそうか、恋人はおらんか」
尚登の笑みが更に深くなる。
「しかし君みたいにモテる男は恋人の一人や二人いるものだと思ったが」
「あー…おじいさんから見てもやっぱ俺ってチャラそうに見えます?」
「わっはっは!自覚はあるのか!しかし"おじいさん"と呼ばれるのは初めてだ!」
「あ!すみません!」
「良い良い。中には儂の事をクソじじいと呼ぶ孫もおるからな。怒っておらんよ!」
慌てて頭を下げる悠生に尚登は陽気に笑って気にするなと手で制す。
「チャラそうに見えますけど結構真面目なんですよ?学校だって休まないし、授業だってサボった事もないし。でもこんな容姿だから誤解されることが多くて」
「真面目なのは良い事だ。尚、儂の孫娘と気が合うに違いない。吾妻君、連絡先を交換しよう。家に招待するのに連絡先を知らないんじゃ困るからな」
そう言って尚登は悠生の連絡先を手に入れた。その後、和菓子を買った悠生が店を出たと入れ替わるように零夜が買い物を終えて戻ってくる。
「お待たせして申し訳ありません。今の方はお知り合いですか?」
「うむ、今さっき知り合ったばかりだ」
尚登と零夜は店を出る。
「零夜、決めたぞ。儂は彼奴も心叶の結婚相手の候補に入れることにした!」
孫髭を撫でながら尚登は愉しげに言った。
「明日、候補者達の面接を執り行う。決まり次第、早急に心叶を宮村家に呼び戻せ」
「…かしこまりました。候補者達に連絡を入れ、明日宮村家に来るよう伝えます」
「彼奴がどんな表情をするのか今から楽しみだ」
後部座席に乗り込んだ尚登は目を瞑り、愉しげな声色で呟いた。
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