第35章 壊れた愛の絆
パシッ
「っ!」
「二度と顔見せんな。次会ったらその首、締めてやる」
凍えるような冷たい視線を向け、マイキーは海凪の所へと歩いて行った。
「……………」
座り込んだまま立ち上がる力すらない。ボーッと虚ろな瞳で一点を見つめるカノト。
その綺麗な両目の紫の瞳からツゥー…っと悲しい涙が零れ落ちた。
「うっ…ひっく…ぁ…あ…ひっ…うぅ…」
今まで堪えていた涙が抑え切れなくなり、子供のように嗚咽を洩らし、ギュッと目を瞑る。
「ひっく…う…うぅ…ふ…ぅ…うぅ〜!!」
両手を重ねるようにして口で覆い、泣く声を誰にも聞かれないように押し殺す。
「(殴られた頬が痛い。ぶつけた体も痛い。悲しくて涙が止まらない。)」
太ももに落ちたままのネックレスの上に一粒の涙がポタッと落ちる。
「や、だ…ひっく…マイキーく、ん…私を…嫌わな、いで…ふ…うぅ…私から…ひっ…離れて…行かないで……っ」
その切ない想いはマイキーに届く事はなく、宙へと消えていった。
✤ ✤ ✤
同時刻───別の場所にて。
有名和菓子店の前に一台の高級車が停まる。そこから降りて来たのは尚登と零夜だ。
「おぉ!ここが人気の和菓子屋か!」
「約150年の歴史を持つ東京でも有名な老舗です。こちらで売られている『どら焼き』は最高級の餡を使っている為、口溶けの良い甘さがあると聞きました」
「それは期待できるな!零夜、お前の目利きは正しかったようだ。事前に下見をしておいて良かったな!」
二人はテレビや雑誌で取り上げられている老舗和菓子屋に来ていた。
「儂は若者向けの甘い食べ物を知らん。こういうのはお前の方が得意だろう。孫達の為に良さそうなのをいくつか見繕ってくれ」
「私は甘い物は口にしないので…」
「有咲は甘いものが好きだっただろう?あの娘の好みでも構わん。それでも難しいなら店員にでも尋ねて適当に詰めてもらえ」
「……………」
「全く、お前は昔から愛想がないな。少しはニコリと笑ったらどうだ。望でさえ儂に嫌味ったらしい笑顔を向けるというのに」
尚登はやれやれと云うように頭に手を当てる。それでも零夜はニコリとも笑わない。
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