第35章 壊れた愛の絆
「(何を言われても諦めないつもりだった。何度傷付けられても頑張ろうと思った。でも…マイキーくんから別れを切り出されて、涙がもう抑えきれなかった。)」
逃げるように病室を出たカノトは泣きそうになるのをグッと堪え、廊下を早足で進んでいた。
「(本当に私を嫌ってた。だから平気で酷い言葉をぶつけて私を遠ざけようとした。存在を無かったことにして…私を拒絶しようとしたんだ。)」
涙で視界がぼやける。マイキーの前では絶対に泣くもんかと決めていたけど、カノトの心はとっくに限界を超えていた。
「(まだ泣いちゃダメ。胸がズキズキと痛む。心が壊れそう。好きな人に嫌われるって、こんなにも悲しくて切ないんだ。)」
人気の少ない階段を使って降りようとすれば、下から上に登ってくる人物がいた。
「碓氷さん…」
「!」
「(何でこのタイミングで…)」
「アンタも万次郎のお見舞いに来たの?」
「はい。でもマイキーくん寝るみたいですよ。誰にも邪魔されたくないみたいなのでまた日を改めた方がいいかも知れません」
海凪をマイキーと会わせたくなくて咄嗟に嘘を着いた。
「そう…分かった」
「(最低だな、私。)」
「目の腫れ、少し引いたみたいね」
「え?」
「あの時酷い顔だったから」
「あ…あぁ、お陰様で何とか。心配してくれてありがとうございます」
「別に心配なんてしてない」
相変わらず素っ気ない態度で言うと、海凪は踵を返し、来た道を引き返そうとする。
「(そうだ。この前のこと謝らないと…)」
カフェでのことを謝罪しようと思って、海凪を引き留めようとした。
「あの碓氷さ───わっ!」
「!」
慌てて手を伸ばし、足を一歩前に出した時、階段を一段踏み外し、ズルッと体のバランスが崩れ、前にいた海凪の背中をドンッと強く押してしまった。
「(え?)」
カノトは何が起きたのか分からない。スローモーションのように海凪の体が宙に投げ出され、ドサッと階段の下に落下した。
「……………」
横向きに倒れた海凪が動かないのを見て、一気に血の気が引いた。
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