第34章 記憶から消えた君
「それはダメ。うちの問題にマイキーくんを巻き込めない。それに…あの人達をマイキーくんに近付けさせるわけにはいかないの」
《まさか…マイキーくんを守るために?》
「おじい様は"宮村家に相応しい人間"を探してる。不良で…しかも暴走族の総長が恋人なんだって知ったら必ずあの人達はマイキーくんを放ってはおかない」
《でもカノちゃん…このままだとお前、好きでもない男と結婚させられるんだぞ。そんなのマイキーくんが許すはずないよ。》
「だからおじい様が結婚相手を見つける前に何とかする。私は…絶対にマイキーくんをあの人達の魔の手から守る」
《何とかするって…》
「マイキーくんには言わないでね。これは私とタケミチくん二人だけの秘密」
《お前の親父さんはどう思ってるんだ…?》
「!」
心配するタケミチから零夜の名前が出て、カノトは小さく反応した後、ふと嘲笑う。
「どうも思ってないよ。あの人はおじい様が決めた決断には逆らわない。それ以前に…私に興味なんかないよ。タケミチくんも知ってるでしょ?あの人がもう私を見限ったこと」
《……………》
「相変わらず最低だった」
《え?》
「あの家の連中全員。あぁでも…美代子さんだけは別。彼女は私達の唯一の味方」
《確か宮村家のお手伝いさんだっけ?》
「うん。もう二度とあの家に戻ることはないと思っていたのに…未だに苦しめられるなんて」
《…なぁカノちゃん。》
「うん?」
《やっぱりマイキーくんに相談した方がいいよ。ほら!マイキーくんがいれば安心だろ?それにお前に何かあればマイキーくんが…》
「いくら"無敵のマイキー"でもあの人達には適わないよ」
《それって…どういう意味だ?》
「喧嘩では圧倒的にマイキーくんの方が強い。でもおじい様は…そういうのじゃないんだ。どんな手を使ってでもマイキーくんを私から引き離そうとする」
《そんなにやばい人なのか…?》
「あの人は人あたりの良さそうな顔を浮かべているけど平気で悪意を撒き散らして他人の心を簡単に踏み躙るんだ」
ニコニコと人当たりの良さそうな顔で近付いて来たかと思えば、耳を塞ぎたくなる程の悪意をぶつけられ、何度も心をへし折られた。
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