第33章 すれ違い、こじれ始める。
「勝手に一人で怒ってろ」
「あ、ま…待って…」
「今のオマエと話したくない」
「っ…………!」
引き留めようと伸ばした手がマイキーの拒絶の一言で宙を彷徨う。
「しばらく反省しろ」
背を向けたマイキーの冷たい声がカノトを突き放す。
「だって…怖いんだもん。マイキーくんが私を愛してくれてるのは知ってる。でも…不安なんだよ。彼女はマイキーくんの初恋だった人だから…いつかマイキーくんの心が海凪ちゃんに奪われるんじゃないかって…怖くて…仕方ないんだよ」
悲痛に想いを口にするも、既に立ち去ってしまったマイキーにその声は届かなかった。
「(…少し頭に血を逆上せ過ぎた。ダメだな…もう良い大人なんだから落ち着かないと。)」
「…あのお客様、大丈夫ですか?」
心配した店員が近づいてきて、遠慮がちに聞いた。
「あはは…大丈夫です。お騒がせして申し訳ありませんでした。それと先程も失礼致しました。あの…このクーポンってケーキ以外も使えますか?」
「え?えぇ…可能で御座いますが…」
「ではこのクーポンであちらのテーブルの女性が頼んだパンケーキと同じものを運んでもらえますか?」
ニコリと笑って言うと店員は"…かしこまりました"と頭を下げて去って行く。
「ふぅ…帰ろう」
気晴らしの筈が更に疲れてしまい、短い溜息を洩らす。ケーキ屋を出て財布の中を確認する。バス賃がギリギリだった。
「…なんか余計に疲れたな」
停車しているバスに乗り込み、座席に座って携帯を取り出す。
「(…謝罪のメールを送らないと。マイキーくんと海凪ちゃんに。私も悪かった。パンケーキを台無しにしたのは私だ。これで二人が許してくれるとは思わないけど…)」
沈んだ心で文章を打ち込む。
「…本当は分かってるよ。マイキーくんがもう私だけを好きでいてくれてること。私にくれる愛が全部ホンモノだってこと。信じられないわけじゃないんだよ…」
目頭が熱くなって涙が溢れそうになった。
「(ねぇ…離れていかないで。ごめんなさい、面倒な女で。私を…嫌いにならないで。)」
本当に自分が最低すぎて呆れる
だから…罰が当たったんだと思う
まさか…あんなことが起こるなんて──……
next…