第31章 思い出は黒く塗り潰される
「オマエを苦しめてる"誰か"って、もしかしてコイツ?」
返事が返って来ないのを知っているが、マイキーは顔を曇らせて聞いた。
「コイツがオマエに孤独を与えて、オマエの寂しい気持ちを拒絶して、オマエを傷付けてんの?」
声にも怒りが含み、思わず写真を持つ手に力が入り、握り潰そうとする。
「(コイツが…いや、"コイツら"がオマエの敵か。)」
黒く塗り潰された人物を睨み付け、小さく舌打ちをした後、写真を封筒の中に戻し、同じ場所へと置いた。
「オマエのことは絶対オレが守るよ」
ベッドの側まで戻って来ると、カノトの頭を撫で、マイキーは優しく微笑む。
「おやすみ…カノ───……」
こめかみに触れるだけのキスを落とし、マイキーは起こさないようにそっと離れ、ゆっくりとドアを開け、部屋を出て行った。
✤ ✤ ✤
「ん……」
しばらくして目が覚めたカノトは眠る前まで傍にいてくれたマイキーが部屋にいないことに気付く。
「マイキーくん…?」
寂しそうに名前を呼んだ。
ガチャッ
「お。起きたか?」
「…兄さん?」
部屋に入って来たマドカに驚いた顔を浮かべる。冷えピタと水を持ってきたマドカはそんなカノトを見て不思議そうな顔をした。
「どうした?」
「ううん…何でもない」
「なぁ、誰か見舞いに来たのか?」
「え?どうして?」
「いや…冷蔵庫開けたらお茶とかゼリーとかたくさん入ってたから驚いて。まぁ…聞かなくても大体分かるけどな」
「マイキーくんが…来てくれたの」
「…そうか。てコトはあいつ、学校サボってお前の看病しに来たんだな!?」
「まぁ大目に見てよ。マイキーくん、私のこと凄く心配してた。私も彼がお見舞いに来てくれて凄く嬉しかったの」
「まぁ…今回は許してやるけどな。もうすぐで夕飯だけど熱はどうだ?」
「朝よりは熱さも引いたし、体の調子も悪くないよ。ご飯は普通に食べられる」
"了解"と言ってマドカは部屋を出て行った。携帯を開き、ピースをしたマイキーの待受画面を見る。
「ありがとう、マイキーくん」
両手で持ち、口元に寄せると、カノトは嬉しそうに笑った。
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