第27章 実らない初恋をいつまでも
ふと冷たい感触に目を醒ます。うっすらと開いた紫色の双眸が最初に視界に捕らえたのは、コンクリートのような灰色の壁に囲われた、温かみのない無機質な部屋だった。
「……………」
まだ覚醒しないボンヤリとした頭で天井を見つめたまま、ゆっくりと思考が働き始める。
「(ベッド…?何で私、寝てるの…?)」
ふかふかの大きなベッドで寝かされていたカノは訳が分からず、やけに気怠い身体を起こす。
「というか…どこ、ここ…?」
周囲を見渡すも灰色で統一された部屋と自分が寝かされているベッド、それと小さな茶色いキャビネットがあるだけ。
「何でこんなところにいるの…?」
戸惑いの色を顔に浮かべ、状況が上手く呑み込めず、慌ててベッドから降りようとした時…。
ジャラリ…
「!!」
重い金属音が耳に届いた。その音は凄く近くで聞こえた。恐る恐る、その金属音が聞こえた場所に手を伸ばす。
「っ!!?」
首に付けられた"あるもの"に触れた瞬間、それが何なのかが分かり、全身の血の気が一気に引いた。指先から伝わるひんやりとした冷たさは、最初に目を醒ました時に感じた冷たい感触だった。
「(首輪!?鎖で繋がれてる!?)」
ギョッと目を見開き、酷く混乱した。先程の"ジャラリ…"と聞こえた音は、自分の首に嵌められている首輪から伸びている鎖の音だった。
「何これ!?どうして首輪なんか!?」
鎖をグッと引っ張ると、ベッドの脚に括り付けられており、逃げられない状況下に置かれている事を知る。
「(お、落ち着いて…一旦冷静になって自分が置かれている状況を整理しないと…)」
頭に手を遣り、ドクンドクンと逸る心臓を落ち着かせる為、深呼吸をする。
「(寝て起きたら見知らぬ部屋にいて首輪で繋がれていて…逃げられないようにベッドの脚に鎖が括り付けられていて…。………?"逃げられないように"…?)」
考えれば考える程、嫌な予感が脳裏を過り、恐怖と不安と焦りが混ざり合い、身体がカタカタと震え始める。
「…監禁、されてる?」
自分で口に出し、驚いた表情を浮かべた。
「(と、とりあえず逃げないと…!!)」
その為にはまず、ベッドに括り付けられている鎖をどうにかしないといけない。
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