第24章 約束を破った罰として
「ねぇ…マイキーくん。返事して…」
ドクンドクンと心臓が嫌な音を立てて鳴る。自分の体から一気に血の気が引いていくのが分かる。目の前にいる愛しい人が…もう目を覚まさない事を、知っていた。
「っ…マイキーくん!!お願い!!目を開けて…ッ!!私の名前を呼んで!!いつものように"カノ"って、呼んでよぉ…っ!!」
「カノちゃん…」
「どうしてっ!どうしてまた私の大切な人が奪われるの!?私は…っ…ただ貴方の傍にいられるだけで良かったのに…ッ!!」
マイキーの手を握り、額に押し当て、泣き喚く。
「どうしてマイキーくんまでこの世界からいなくなるのッ…!!!」
どう泣き叫んでも結果は変わらない。もう彼は二度と息を吹き返す事も、その声で名前を呼んでくれる事もないのだから。
「ふっ…うぅ…マイキーくん…マイキーくん…っ」
ポタポタと溢れ出す涙がマイキーの体に落ちる。ショックで泣く事しかできないでいると…マイキーの側に何かが落ちているのを発見した。
「!」
それを拾い上げて、目を見開く。
「…捨てたって、言ってたじゃない」
マイキーのネックレスがそこにあった。彼はカノとの関係を断ち切る為にネックレスを捨てたと言っていた。だがこうして手元にあると言う事は…。
「"繋がりを断ちたかった"なんて…嘘ばっかり。本当に私との繋がりを切り離す気があるなら、こんなの持ち歩かない」
口では捨てたと口答していたが、本当はカノとの繋がりを消したくなかったのだ。だからこそ、こうして身に離さず、手元にずっと残していた。
「…ずっと大事に持っててくれたんだ」
目尻に涙を浮かべたまま、ネックレスを握り締め、胸に当てて、嬉しそうに微笑む。
「本当に…困った人」
マイキーを見て笑い、ネックレスをそっと胸の上に乗せる。そして決意するように顔つきを変えたカノはタケミチを見た。
「タケミチくん。まだ旅は終わらない。そうだよね?」
「!あぁ!」
「ナオトくん。こんな『最悪な未来』は変えなくちゃいけない。そうでしょ?」
「カノさん…」
マイキーの冷たくなった手を握り、カノは灰色の空を見上げた───。
next…