第24章 約束を破った罰として
「(そうだ…私はまだ死ねない。大事なミッションが残ってる。兄さんとマイキーくんを救って、みんなが未来で幸せに笑っていられる世界を取り戻す。)」
タケミチの言葉に励まされたカノは首を少し後ろに向け、マイキーを見る。
「マイキーくん。貴方は私を殺さない」
「あ?」
「私が死んだらきっと悲しむ。私を殺した事を絶対に泣いて後悔する」
「オマエが死んでも何も感じねぇって言ったはずだ。それともオマエはオレが泣いてオマエの死を悲しむと本気で思ってるのか?」
「はい」
即答した返事にマイキーは眉を顰め、ぐっと顔をしかめた。
「だってマイキーくんは優しい人です」
「人を殺したオレが優しい?オマエはオレの何を見てそんな事言う?」
「ずっと貴方を見てきたから」
「!」
「これでもマイキーくんの事は少し分かるんですよ。貴方に恋をした時から、私はずっとマイキーくんしか見てないんです」
「…やめろ」
「貴方が私の幸せを願い、笑顔でいられる世界を守ってくれる。昔も今も私を大事にしてくれている事くらい、分かります」
「…自惚れも大概にしろ。もうオマエはいらない。オレの中から出てけ。未来までオレの邪魔するな」
「その証拠に、貴方はまだ私を殺してない。殺せるチャンスはいくらでもあったのに」
「っ…………」
「本気で殺す気があったなら、最初に会った時点で、他愛話なんかせず、すぐに殺してるはずですから」
首に回されてる腕にそっと触れれば、ビクッと小さくマイキーの体が震えた。
「だからマイキーくんはとても優しい人」
「カノ……」
「一緒に帰りましょう、マイキーくん。私はずっと貴方の傍にいます。もう、独りでいる事に慣れさせません」
にこっと微笑むと、マイキーの黒い瞳が光を取り戻すかのように一瞬、揺れる。だが悲しい表情でどこか辛そうな目をしたマイキーは銃を突き付けたまま、カノの耳元に唇を寄せ、小さく囁いた。
「───ごめんな……」
ドンッ!!
何が起こったのか分からない。マイキーが謝罪した直後、突然どこからか発砲音が響き、気付けば、カノの首に回っていた腕は消え、背中に感じていたマイキーのぬくもりは無かった。
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