第18章 ふたりきりのクリスマス
建物を出るとさっきまで降っていた雪が止んでいた。少し肌寒さを感じ体を震わせるとそれに気付いたマイキーが自分の首に巻いていたマフラーを外した。
「オレのマフラー貸してあげる」
「それだとマイキーくんが寒いじゃないですか…」
「オレは男だから少し寒くても平気なの。でもカノは女だろ?体冷やして体調崩したら大変じゃん」
ぐるぐるとマフラーを巻いてくれるマイキーの優しさに心が温かくなる。
「ありがとうございます…」
「暖かくなった?」
「はい」
「ホントに?」
「本当に暖かくなりましたよ」
「オレがぎゅーって抱きしめた方が絶対に暖かくなると思うんだけど?」
「!」
「一回だけ、ぎゅってさせて?」
寂しげな目でカノトを求めるように両手を広げるマイキー。それに応えるようにマイキーに体を寄せ、ぎゅっと抱き着いた。
「マイキーくんに抱きしめられた方がすごく暖かいですね」
「……………」
「マイキーくん?」
「オマエを失わずに済んで良かった…」
抱きしめるその体が小さく震えているのが分かる。人前では気丈に振舞っていたが、本当は助けに行くまでカノトの事が心配で仕方なかったのだ。この場所を突き止めるまで焦りと不安が一気に押し寄せ、一向に見つからない事に苛立ちさえ思い浮かんだ。その時に聞こえたのだ。マイキーに助けを求めるカノトの声が───。
「はい…助けに来てくれてありがとうございます、マイキーくん。私はちゃんと貴方の傍にいますよ」
「うん…」
存在を確かめるかのように抱きしめるマイキーの腕に力がこもる。一回だけのはずが抱きしめる時間が長い。ぎゅぅぅっと抱きしめたままマイキーはカノトを離さない。少し困ったようにマイキーの背中を優しくポンポンっと叩いた。
「マイキーくん。そろそろ行きましょう。」
「まだ抱きしめてたい」
「じゃあまた後でしましょう?ね?」
「…それって、ちゅーもさせてくれる?」
小さく頷けば、納得してくれたのか、ようやくマイキーは解放してくれた。嬉しそうな顔で上機嫌に笑い、ヘルメットをカノトに渡し、バブを走らせた。
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