第17章 助けを求めたのは
ビシッと指先を突きつけたマドカにキョトン顔を浮かべるマイキーだが、"あー…"と言葉を濁し、どこか気まずそうに視線を逸らしてから戻し、にこりと笑った。
「手を出す寸前まではいきました」
「はぁ!?」
「何言ってるのマイキーくん!?」
「おまっ…お前それどういう…!」
「落ち着いて兄さん!そんな事してないから!大丈夫だから!」
「ハグとキスはしてんじゃん」
「わああ!!馬鹿!!兄さんの前でなんて事言うんですか…!!」
慌ててマイキーの口を手で押さえる。マドカはショックを受けた様子で固まっていた。
「ハグとキスって…それもうヤッてんじゃねえか!!」
「ヤッてない!!」
「おいコラ!!未成年の分際でうちの可愛い妹に何してくれてんだ!!」
「カノさんが可愛すぎるのが悪いと思います!!」
「それは間違いない!!」
「そこだけ意気投合しないでください!!」
キランっと目を光らせ、何故か二人はガシッと握手を交わす。その様子に恥ずかしさで体がわなわなと震えたカノトは叫んだ。
「コイツらは二度と馬鹿な真似できねェように俺がきちんと言っとくから、お前らはもう帰っていいぞ」
「え?でも…また喧嘩になったら…」
「安心しろ。こう見えて俺は腕っ節が強いんだ。なんたって"皇帝"だからな。ただもう喧嘩はしねェ。俺は話し合いの方が好きなんだ」
完全にノびている男達を見下ろしながらマドカは言う。
「マイキーくんと一緒に…いてもいいの?」
「認めると言った手前、"一緒にいるな"なんて言えねぇだろ。それに…今日はクリスマスだ。少しは大目に見てやるよ」
「ありがとうございます」
「ありがとう!兄さん!」
「(やっと笑ったな。本当に好きなんだな、こいつの事が…。)」
マドカは目元を緩め、ふと優しげに笑う。
「起きる前にさっさと此処を出ろ」
「行こう、カノ」
「はい、マイキーくん」
二人は肩を並べて歩き出し、その場から立ち去る。その後ろ姿を見送っているマドカは目を瞑り、微笑んだ。
「ありがとな───真一郎。」
上手く引き合わせてくれた親友に改めて感謝の言葉を述べるマドカだった。
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