第9章 東卍vs.芭流覇羅
決戦前日────。
「こんにちは、場地さん」
「何でテメーがココにいんだ…?」
「偶然お見かけしまして」
歩道橋の上にいる場地を発見したカノトは話がしたいと思い、場地に声を掛けるも、案の定、嫌な顔で舌打ちをされてしまった。
「場地さんこそココで何を?」
「テメェには関係ねェだろ」
「稀咲のシッポは掴めました?」
「あン?」
「東卍の為にスパイやってるんですよね?」
「……………」
場地の冷たい目が突き刺さる。
「何言ってんだテメー…?」
「貴方は東卍の為に芭流覇羅に入り、稀咲の動向を探っている。“踏み絵”として千冬くんを殴り続けたのも、半間に信頼を得らせる為。本当は千冬くんを傷付けたくなかったはずです。違いますか?」
「…相変わらず都合のいい頭してんな宮村。テメーのいいように解釈してんじゃねーぞ」
「……………」
「オレが東卍の為にスパイやってるって?ハッ、冗談にしては笑えねェな」
「僕は本気で言ってます」
「テメーが何を思おうが勝手だ。オレはもう芭流覇羅なんだよ。明日、東卍を潰す!」
「…では一つだけ、言わせてください」
真っ直ぐに場地を見る。
「明日を無事に乗り切ってください」
「!」
「あと周りにも気をつけて。誰がどこで何をするか分かりませんから」
「…テメーも同じこと言うんだな」
「え?」
「オレが死ぬとマイキーが悲しむだか何とか言いやがった奴がいたんだよ」
「(タケミチくんか…)」
「オレはオマエらの敵だ!敵の心配なんかしてんじゃねェよ」
「僕は信じてます。場地さんは必ず東卍の…みんなの所に戻ってくると」
「戻らねェよ」
そうハッキリと断言された。
「つーかオマエ、オレなんかに構う暇があンなら、“やるべき事”をしろよ」
「気にかけて頂いて有難うございます」
「気にかけてねーよ、自惚れんな」
「…場地さん、幸せな世界って、一体どこにあるんでしょうね」
「あ?」
「どうか場地さんも…死なないでください」
そう言い、カノトは悲しげに笑った。
.