第8章 寂しがりな君に贈るキス
「オマエが宮村心叶都か?」
「あ、はい…」
雨が降り頻る日、タケミチに紹介したい奴がいるからと呼び出され、傘を差し公園に向かうと、顔中に絆創膏と包帯、片目にガーゼを貼った少年がいた。
「東京卍會、壱番隊副隊長、松野千冬だ。オマエの事はコイツから聞いてる。オマエも場地さんが本気で東卍の敵になったワケじゃねぇって思ってんだろ?」
「もちろん。きっと場地さんには東卍を抜けて芭流覇羅に入る為だけの理由があったんだと思う」
「コイツタケミっちより頭いいな」
「悪かったなバカで!」
千冬がからかうようにカノトを指差しながら怒るタケミチを見て笑う。
「ところで…何で二人はそんなにボロボロなの?喧嘩でもしてきた?」
「一虎君に芭流覇羅のアジトに連れて行かれただろ?そこに踏み絵になった千冬と場地さんもいたんだ」
「え?どういうこと?踏み絵…?」
話の内容が見えず首を傾げるとタケミチが詳しく話してくれた。
誠意を見せる為に場地が一番信頼してる千冬を踏み絵として殴り続けた事。場地を連れ戻そうとして失敗した事。一虎がマイキーの兄の真一郎を殺害した事。芭流覇羅が東卍を潰そうとしている事。その他にも色々聞かされたカノトは衝撃のあまり言葉を失った。
「1週間後の10月31日…廃車場で芭流覇羅vs.東卍の決戦が始まっちまうんだ!!」
「ま、待って…羽宮くんが…マイキーくんのお兄さんを…殺した…?」
「一虎のこと知ってんのか?」
「……友達。」
タケミチと千冬は目を見開いた。
「羽宮くんが…そんな…」
「否定したい気持ちは分かる。でも一虎君と場地君が真一郎くんの店に忍び込んで、一虎君が真一郎君を殺しちまったのは紛れもねぇ事実だ!」
「……………」
「一虎はマイキー君を憎んでる。だからマイキー君を殺そうとしてるんだ」
手に持っていた傘を落としそうになる。真一郎を殺害しただけじゃなく、マイキーまで殺そうとしている一虎にカノトは辛そうに目をギュッと瞑った。
「カノト…」
静かにタケミチに呼ばれ、不安げな顔で目を開ける。
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