第62章 これからも家族3人で幸せに(❤︎)
そして───……
「こんな感じでどうかしら」
「うわぁ…私じゃないみたい」
「どこからどう見てもカノよ」
鏡に映った自分の姿を見て感動する。後ろで束ねた髪はゆるふわのシニヨンで纏め上げられ、メイクはピンクのキーカラーを中心に、瞼の上や頬に色が付き、可憐さを引き出ていた。
「やっぱりプロの腕前はすごい。素敵に仕上げてくれてありがとう、海凪ちゃん」
「お礼なんていいわ。今日のアンタは花嫁だもの。素敵に仕上げるのは当然だわ。そのウェディングドレスもよく似合ってる」
「三ツ谷くんの手作りなの」
三ツ谷にオーダーした純白のウェディングドレスに身を包んだカノは嬉しそうに笑う。
「そろそろアイツ呼んで来た方がいいわね。アンタと同じ部屋じゃなくて文句垂れてたから」
「あはは…」
「本当にアンタの旦那はいつまで経っても成長しないわね。子供っぽくてワガママだわ。でも…アンタが大好きで仕方ないってところだけはずっと変わらない」
メイク道具を鞄にしまった海凪は、マイキーを呼びに行くために控え室を出ようとした。
「カノ」
「!」
首だけを後ろに向けた海凪が言う。
「結婚おめでとう。幸せになりなさい。」
「うん。ありがとう、海凪ちゃん。」
ふと笑みを崩した海凪は控え室を出て行った。一人その場に残されたカノは、もう一度、自分の姿を鏡に映す。
「(本当に綺麗。)」
イヤリングとネックレスは母の有咲が父の零夜と結婚した時に身に付けていたものを借りた。今日の結婚式にも参列してくれている。
「(あの頃は宮村家の人間が大嫌いで実家には近寄らなかったけど、未来が変わったこの世界では…家族みんなが仲が良い。)」
相変わらずおじい様は意地悪だけど
取り返しのつかない冗談は言わない
"結婚相手を探す"
昔は私の気持ちを無視して
婚約者候補を見つけては
無理やり結婚させようとしていた
今では"早く孫の顔を見せろ"としつこいほとだ
「…諦めないでよかった」
すると突然ガチャッと扉が開かれる。マイキーが入って来たのだと思って振り返ると、そこには黒いフードを頭まで被った人物が立っていた。
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