第61章 巡り会って、また恋をして。
「今度は大丈夫です」
「ん?」
「この世界線は"正解"です。私達は『正しい道』を歩んでいけます。もう二度とあんな未来にはなりません。貴方を独りにさせません。貴方の傍から離れません。この世界は貴方を幸せにする為の世界です」
「!……ウン、そうだな…きっとこの世界は大丈夫だ。オマエのいる世界だから。オマエが傍にいてくれる未来だから。オレはもう独りにならないし、黒い衝動も生まれない」
マイキーは柔らかな笑みを浮かべてカノと手を繋ぐ。
「好きです、万次郎くん。改めてこの世界でも末永くよろしくお願いします」
「オレも好きだよカノ。これから喧嘩もたくさんするだろうけど、オマエに注ぐ愛は変わらない。一生かけてオマエを愛すよ」
「はい」
今までの世界線は過去を変えるのにいつも必死だった。時には無茶をして大怪我したり、時には大事な人と訣別し殺されかけたり。思い返すと本当に大変な使命を背負っていたが、それも今回で終わらせることができる。
この世界では過去を変える必要はない。この世界は…最後の世界線だ。大事な人と共に手を繋いで未来を歩み、他愛もない事で愛を囁き、笑い合う。
そして──……
いつまでも幸せに暮らすのだ───。
◇◆◇
数日後、紙袋を片手に抱え、佐野家に到着したカノはインターホンを押そうとする。
「オイ!!」
「!!」
「見ねぇ顔だけどマイキーん家に何の用だ!!?」
「え?」
「ピンポンダッシュなら許さねぇぞ!!」
突然の怒号に驚いたカノが振り返ると、そこには黒いランドセルを背負った少年がいた。
「嘘……」
「あん?なんだコラその目は」
「(場地さん…?)」
「早く答えろ!!マイキーん家に何の用だよ!!」
「え、えっと…」
警戒心剥き出しで近付いてくる場地のキレ顔に体が萎縮し、言葉を詰まらせる。
「ん?オマエ何持ってんだ?」
場地の視線がカノが抱える紙袋に注がれる。
「あ…たい焼きだよ。マイキーくんと一緒に食べようと思って持ってきたの」
「マイキーの好物まで知ってるとか…オマエただの不審者じゃねぇな」
「(ふ、不審者扱い…)」
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