第59章 最終決戦
「勇者チャンを逃がしても無駄だぜ。テメェをぶっ倒してオレはまた勇者チャンを追いかける。そんでマイキーの前で勇者チャンを奪う」
「どんだけ執念深い男なのよ。あの子はアンタの愛なんて欲しくないって言ってるでしょ。一方的な愛の押し付けは見苦しいわよ」
「オレがどんだけ勇者チャンのこと探し続けたと思ってる?勇者チャンを見つけた時、どれほど嬉しかったか。それまで息を潜めてた愛が一気に膨れ上がって、オレのモノにしたい衝動が抑えられなくなった」
「……………」
「これは勇者チャンを本気で愛してる証拠だ。だからいつまでも勇者チャンの存在を追っちまう。勇者チャンがオレを愛してくれると信じてるから。な?オレの愛は普通だろ?」
「どこが普通よ。聞いてて鳥肌が立つわ」
狂った思考の半間に海凪はドン引きだった。
「あの子がアンタを愛す日なんて死んでも来ないわよ。期待するだけ無駄。いい?あの子の愛は最初から万次郎のモノなのよ。それを奪うつもりならアタシが許さないわ」
「マイキーは勇者チャンの愛を捨てた。ならその捨てた愛をオレが代わりに貰っても別に何の問題もねェだろ?」
「ずっとあの子だけを一途に想い続けてきたアイツが、何よりも欲しがった好きな人からの愛を誰かにあげるなんて絶対に出来っ子ないわ」
マイキーがどれほどカノトのことを愛し、大事にしてきたのかを海凪は知っている。誰よりもカノトの幸せを願い、その笑顔が消えないようにずっと守ってきた。
マイキーにとってカノトは絶対に失いたくない存在で、自分が間違った道に進んだ時に『正しい道』へと導いてくれる光のような存在でもあった。それほど大切に想ってきた人の愛を捨てる事など不可能だと海凪は強く肯定した。
「…頑張りなさい、カノ」
海凪はカノトのいる方に目を向けながらそう呟いた。
◇◆◇
半間と海凪が対峙する頃、マイキーの元に辿り着いたカノト。
「ここに来るのはアイツだと思ったんだけどな」
マイキーは冷たい声で言うとコンテナの上から飛び降り、無表情でカノトを見る。
「……………」
マイキーと向き合うカノトは悲しい瞳を揺らしながら、グッと掌を強く握りしめた。
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