第59章 最終決戦
「知ってっか勇者チャン。人ってよぉ、忘れなきゃって強く思うほど簡単には忘れられねぇ生き物なんだよ。それが特に大事なモンならな」
「どういう意味?」
「勇者チャンはアイツにもう興味ありませんって顔してるけど…本当にマイキーの存在ごと記憶から忘れることできんの?」
「!!」
「あんだけ長いこと一緒に過ごしてきた相手のことを完全に忘れることなんて不可能だと思ってっけど…勇者チャンはどう思う?」
「………………」
その言葉が不愉快だったのか、怖い顔を浮かべたカノトは無言で半間をキツく睨んでいる。
「ま、勇者チャンがアイツのこと忘れてくれんのはオレとして好都合だし問題ねぇけどな♪だからオレと一緒に幸せになろうぜ勇者チャン」
「君のやり方は異常だ。どこまでも執拗に追いかけ回して捕まえようとして。君は諦めるって言葉を知らないのか?」
「知ってても今更諦められねーよ。オレの人生を変えてくれたのは勇者チャンなんだ。クソつまんねー世界が勇者チャンに一目惚れした瞬間にガラリと変わった。そんな相手を…みすみす逃がすわけねーじゃんか!」
「っ!!」
半間の蹴りを躱す事が出来ず、横顔に強烈な一撃を食らい、地面に倒れる。
「あー大事な勇者チャンの顔に傷を作っちまった。モロ直撃したけど平気か?勇者チャン❤︎」
「本気で蹴っておいて笑って吐く台詞か…っ」
「勇者チャンが降参してオレのモンになるって言うならもう傷付けないでやるよ」
カノトは血が流れる頭に手を添えながら、痛みに堪え立ち上がる。
「何度も言ってるだろ。君の気持ちには答えられない。卑怯な手を使って僕を捕まえても、君に心が揺れることは絶対にない」
「………………」
「だからいい加減諦め…」
「ガキの頃から勇者チャンだけを想い続けてきたのに何で思い通りになんねーのかな。勇者チャンの心を揺さぶるにはどうすっかなぁ」
「半間?僕の話を聞いて──」
「そーだ。揺れるように仕向けりゃいい。なんだ、簡単だったな。…となると、勇者チャンの心を揺さぶるには…とりあえず兄貴でも殺しとくか?」
それを聞いた途端、ブチッと頭の中で何かが切れたカノトは勢いよく拳を放った。
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