第59章 最終決戦
「(どうにかして半間を退かせないと…)」
「なぁ勇者チャン、オレと勝負しようぜ」
「急に何を…」
「もし勇者チャンが勝ったら、オレはもう勇者チャンのこと執拗に追い回すのはやめる。」
「!!」
「けど勇者チャンが負けたら…」
ごくりと生唾を呑む。半間は伏せていた目をカノトに向けると、ニヤリと笑う。
「勇者チャンの大事なもん全部ぶっ壊して、オレのモノにする」
「っ………!!」
「そうすれば何もかも失った勇者チャンは、オレに縋るしかなくなるだろ?」
「最低だな君…っ!」
「勇者チャンに罵倒されんのは本望だ❤︎」
「(駄目だ…話が噛み合わない。)」
苛立ちが募り、思わず舌打ちしそうになる。カノトは呆れ返るように溜息を吐いた後、怒りを孕んだ紫色の瞳を半間に向けた。
「僕が前に言ったことを忘れたのか、半間。」
「!」
「僕の大事なモノを壊すな。傷付けるな。消そうとするな。触ろうとするな」
「よぉく覚えてんよ。勇者チャンの言葉は一語一句、完璧に覚えてるからな」
「(それはそれで気色悪いな。)」
「本気で欲しいモンは何が何でも手に入れてぇ主義なんだ。例え好きな奴の大事にしてるモンを全部ぶっ壊してでもな」
「そんなの絶対に許さない」
ギロッと鋭い眼差しを向ければ、半間は恍惚とした眼でカノトを見る。
「その眼、ほんと堪んねェなぁ。これからもオレだけを見つめててくれよ。睨まれてもそれが勇者チャンなら全然許すし♪」
「………………」
「さて…勇者チャンに手加減は失礼だよな。オレの愛を証明する為にも勇者チャンに勝たねぇと。少し傷付けちまうけど…ごめんな❤︎」
「(本気の半間との真っ向勝負。きっと今までと同じだと思って戦うと痛い目をみる。半間の強さはドラケンくんと互角だった。そんな奴に勝てるか分からないけど…捕まるのはもう御免だ!)」
緊迫した空気が流れ始める。余裕な笑みでこちらを見つめている半間に、冷や汗を掻きながらごくりと生唾を呑み込み、半間の出方を窺う。
「乱暴にはしねェからな、勇者チャン❤︎」
嬉しそうに口許を歪めると、半間は一気にカノトとの距離を詰めて来た。
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