第57章 私の知らない貴方
「(3チームが揃った。三天戦争が始まる。)」
マイキーが関東卍會の面々を引き連れて登場した事で、三天時代を象徴する3チームが勢揃いし、緊迫していた空気が更に強く張り詰める。
「(…怖い顔。あの頃みたいに笑っていた貴方はもう見られないのかな。)」
愛機に跨りながら光を無くした黒い眼で、ジッと目の前の現状を無表情で見据えるマイキー。何の感情も宿っていない冷たい瞳に胸がキュッと締め付けられ、カノトは悲しい顔を浮かべる。
「ドラケンの弔い合戦だ!!!」
「三天戦争おっぱじめんぞ!!!」
「全員ぶっ殺せ!!!」
武臣・サウス・三途の合図で各チームが雄叫びを上げ、状況は更に最悪な方に傾き、遂に三つ巴の三天戦争が始まった。
「(ドラケンくんが死んだって言うのに…どうしてまだ傷付け合うことができるの?)」
目の前で繰り広げられる乱闘を地べたに座り込んだまま、絶望感に包まれた顔と虚ろな瞳で茫然と眺める。
「(彼は…こんなこと望んでないのに。)」
「隙ありィ!!」
「カノト…!!」
「!!」
背後から襲い掛かろうと拳を振り上げた男に気付き、焦った様子で千咒がカノトの名前を叫ぶ。その声にハッとしたカノトは拳が当たる寸前で器用に躱し、地面に出来た水溜まりをバシャッと踏みながら体勢を立て直す。
「随分とおキレーな顔だなオイ。こんな奴が梵なのかよ?強そうな感じには見えねぇな」
「…人を見かけで判断すると痛い目見るぞ」
「あ?」
「(あの特服、関東卍會の…。)」
「ぶっ殺せって命令だからな。その女みてぇな顔ぐちゃぐちゃに歪ませてやるよ」
ボキボキと組んだ両手を鳴らしながら、ニヤリと厭らしく笑う男を睨み付けるカノト。
「……………」
大勢いる群衆の中から偶然か否かは分からないが、カノトの姿を見つけたココは静かにその様子を遠くから見つめていた。
「様子を見んぞ…ココ」
「!」
そして視線はマイキーに移る。
「動かねぇのか?ボス」
「ああ。しばらく春千代たちに任せよう」
「オマエ…なんとも思わねぇのか?」
「………、何を?」
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