第55章 明司兄妹
「花垣持て!」
「えぇ!?」
「オマエは荷物持ちっつったろ」
「そんなぁ〜」
トホホ…と涙を浮かべながら肩を落とすタケミチ。千咒とカノトの分の会計を済ませて店を後にする。
「次次ぃー!!!楽しくなってきたー!!」
「えー!!?まだ買うの!!?」
「僕のより千咒の荷物でいっぱいだね」
「どんだけ買う気だよ〜」
タケミチの両手には千咒の荷物が抱えられている。それも頭上を超えるほどの量だ。
「少し持とうか」
「カノちゃん…っ」
さすがに可哀想だと思ったカノトが半分引き受けようとする。
「早く行こうよカノト!!モタモタしてると日が暮れちまうぞ!!」
「わっ!?」
「結局オレが運ぶのかよ〜!!」
前を歩いていた千咒が引き返して来てカノトの手を引っ張り、駆け出してしまう。それを見たタケミチはショックを受け、文句を言いつつも急いで二人の後を追いかけた。
「えー!!どうしよー!!これかっけぇ」
「う…うん、ハデだね…。
もうオレ持てないよ?」
「カノト!コレなんて似合うんじゃないか!」
「英語のロゴは意味を知らずに着ると海外の人達に笑われるものもあるんだよ。ちなみにそれに書かれてる英語は訳すと『夢は世界征服』になるから却下かな」
「世界征服はダメだな…」
千咒も分かってくれたのか、手に持っていた服をそっと売り場に戻した。
「ねぇ?明司さんとかとはさ、どういう関係なの?」
「どういう関係って?」
「あの人は初代黒龍ってぐらいだから20代半ばとかでしょ?君はどう見てもオレとタメぐらいじゃん?どういう付き合いなのかなーって」
トレーナーを試着した千咒にタケミチは気になっていた質問をぶつける。
「兄貴だよ」
「え…?兄妹って事!?」
「ウン。千咒(ジブン)の本名は明司千壽。"瓦城千咒"は源氏名みたいなモン」
「げんじめい?」
千咒から返ってきた答えは"明司武臣"とは実の兄妹だと云う事実だった。
「(千咒と武臣さんが兄妹…)」
「春千代と考えてたんだー」
「ハルチヨ?」
.