第7章 嘘…
夕飯を食べているとき、最初に口を開いたのは秀一くんだった。
「で、お姉ちゃん。アノ話、断ったよね?当然」
「アノ話……?」
「うん。カラオケの話」
二人で食事の手を止め、会話に集中し始める。
「あ……うん。断ったよ」
秀一くんの顔がパッと明るくなる。
「本当?!よかったぁ。ありがと!」
「…………うん」
そして再び食事をしようと顔を下に向けると、
「じゃあ今度は、あの人と話さないでよ」
「え………」
秀一くんの言う『あの人』は、和也のことだろう。
…………断ったら、どうなるのか。
嫌な予感しかしない。
「……う、ん。わかっ………たよ」
また秀一くんは笑顔になる。
さっきよりも笑顔に。
「ありがとう!お姉ちゃん大好きだよ!」
ニコニコと食事に戻る秀一くん。
もし断ったら………
あの時の記憶が蘇る。鮮明に。
カタカタと震えだす体を誤魔化すように、私も食事に戻るのだった。