第8章 愛しい人の記憶
煉獄さんがまたお化け屋敷に戻ってからも、私はしばらくベンチに座っていた。
気持ちの良いそよ風が、気持ちを優しく落ち着けていく。
どれ位いたのか分からないけれど、しばらくフワフワした気持ちでボーっとしていた。
帰ろうかとも思ったけれど、せっかく鬼滅学園に来た事だし、もう少し見て帰る事にした。
善逸君からお誘いいただいた、善逸による、善逸ファンのための?
石膏で作る善逸オブジェ展を見に行ってみよう。
善逸オブジェの教室は、女子より男子が多かった。
善逸君は男子に人気があるのかな?
全て善逸君を型どった大きめな作品が並ぶ。
考える善逸、ダビデ像になった善逸など。闘う善逸だけは服を着ているけれど、あとの作品は全て裸体だった。
しかも、素晴らしい肉体美で、見てる方が恥ずかしくなりそうだった。
「あっ!妹子さぁ〜ん!来てくれたんですかぁ!!」
可愛い顔を笑顔にして善逸君は言った。
「うん!遅れてごめんね!善逸君のオブジェ、直視出来ないほどの肉体美なんだもん。恥ずかしくなっちゃうよ。」
芸術作品なのも忘れて、身体として見てしまった不埒な私は、つい口に出してしまった。
「女子の感想は皆そうなんですよ。芸術を分かってなくて困りますぅ。まぁ…その気持ちも分からなくはないけど♡」
少しニヤニヤしながら言う。
「ん?何が?」
私が聞くと、善逸君は密やかにたくらむ目をして言った。
「これは内緒なんですけど、このボディは、僕と煉獄先生と、宇髄先生の身体を混ぜ合わせて出来たものなんですよ!」
「えっ?」
「だって先生達って良いカラダしてるしぃ〜!放課後にプールで泳いでる所を女子に紛れて毎日見に行って、出来たんですよぉ!」
「な、なんのために…?」
私が聞くと、善逸君はクネッとした。
「だってぇ、モテたいじゃないですかぁ!これを見た女子は、僕の身体がこうだって、思うはずですぅ!」
「なるほど…。」
女子にモテるための執念が生み出した作品だったのかぁ。
芸術が生まれるきっかけは、案外そんな理由からかもしれない。
善逸オブジェは美しかった。
帰りに、善逸君は10センチ位の大きさの、ミニ善逸人形を私にくれた。以外と重い…。
善逸君にさっき買ってきたジュースを渡して別れた。
この学園の生徒さん達は、才能溢れる個性的な子が多いんだな。