第7章 秋の鬼滅学園文化祭(後編)
「わあ!先生達の顔だ!可愛い!!」
クッキーを見た禰󠄀豆子ちゃんが嬉しそうに言った。
私のお手本を見て、禰󠄀豆子ちゃんは宇髄先生の顔を描きだした。
丁寧に、綺麗な線で描いている。
「禰󠄀豆子ちゃん、すごく上手だね!」
禰󠄀豆子ちゃんは微笑むと、一生懸命に描いてゆく。
私も煉獄先生の顔を描く。
煉獄さんの顔…目が大きく切れ上がっていて、赤い瞳はいつも輝いていて、形の良い高い鼻と、綺麗な唇。笑うと白い歯が見えて…。そう…笑うと、目が優しくて…。
思い出そうとしなくても、すぐに描けた。
今までに見た色んな表情の煉獄さんを、描いていく。
私も禰󠄀豆子ちゃんも、しばらく無言になって没頭していた。
「うむ!!よく描けている!!感心、感心!!」
頭の上で声がして、ハッと顔を上げると、煉獄さんがクッキーを覗き込んでいるところだった。顔を上げた私と煉獄さんの顔が、鼻先が触れ合いそうに近くて、至近距離で目が合った。
……身体の中を甘い衝撃が駆け抜けた気がした。
ドキドキしながら手元を見ると、夢中で煉獄さんの顔ばかり描いていた自分に気が付いてしまった。
煉獄さんは、腕を組んでクッキーをしげしげと見つめている。
「…煉獄さん、こんにちは」
恥ずかしくなりながら挨拶すると、キラキラした笑顔が返って来た。
「小野さん!今日も宜しくお願いします。…想像以上にそっくりで、驚くな…。」
自分のクッキーを見て、少し照れ臭そうにしている。
「あっ、煉獄先生!上手く描けたでしょ!」
禰󠄀豆子ちゃんが、煉獄さんを見て嬉しそうに笑った。
「うむ!!竈門妹はなかなか上手い!!宇髄先生の特徴をよく掴んでいるな!こっちは伊黒か!!ハハハ!冨岡もそっくりだ!!」
煉獄さんに褒められて、禰󠄀豆子ちゃんは嬉しそうに笑う。
腕を組んで見ている煉獄さんの視線がドアの方に向けられた。
生徒さん達が入って来る所だった。
皆に着席してもらって、まず、私が見本を見せる。
クッキーの上に、まず細い線で煉獄先生の顔を描いて、線の中に色の付いたアイシングを流し込み髪の毛や顔を作りあげて行く。
目や唇などのパーツは、ある程度乾いてから。
ちょっと難しいけれど、皆、真剣に見てくれている。