第3章 偶然の1日
ベルギーに行ったら、夏はバカンスに行って焼いちゃうか。
こんがり日焼けした肌で過ごすのも良いかもしれない。
そこに素敵な彼がいたら…。
そんな事を考えながら、曲がり角を曲がった時、向こうから金色の髪の人が歩いて来るのが見えた。
所々が赤い髪。今日は一つに結んでいる。
薄いブルーのシャツを着ている。すごくスタイルが良いのが分かった。
煉獄さんだ。
煉獄さんは10メートル先位を歩いていた。
こちらに向かって来る。
どうしよう、お声かけするべきか、そのまま通り過ぎるべきか…。
私は煉獄さんだと分かったけど、向こうは私をきっと分からない。
フラムの販売員の者です…なんて、言われたところで困惑しかないだろう。
ここは、軽い会釈に留めて、黙って通り過ぎよう。
私達は知り合いではなく、私はただの販売員に過ぎないのだ。
3メートル程に近づいた時、煉獄さんが私を見た。
私は会釈して、そのまま通りすぎる覚悟だった。
さらに近づいて、私は頭を下げて、そのまま行こうとした。
「こんにちは!君はあの店にいた女の子だな」
びっくりして立ち止まると、煉獄さんは私を見て笑った。
「この前はありがとう。今日はお店は休みですか?」
煉獄さんは私を見て笑顔で言った。
煉獄さんは私だと分かったんだ…。
私は煉獄さんの顔を見た。どうしよう。初めから、ちゃんと挨拶すれば良かった…。
会釈だけで、通り過ぎようなんて、なんか申し訳なかった。
私は真深に被っていた、麦わら帽子を上げて、煉獄さんの顔を見た。
今度は、ちゃんと煉獄さんの方に近づいて、頭を下げた。
今日は髪、一つに結んでるんだ…。素敵だな。
「こんにちは。私、きっと気付いていただけないと思って、会釈だけして通り過ぎるつもりでした。すみません。お元気ですか」
見るからに元気そうな人に聞くのも変だけど、一応元気か聞いてみる。
「ああ!とても元気だ!君は?」
はきはきと、明るく話す。
「ここは暑い。良かったら場所を変えて話そう。時間はある?」
優しく聞かれて、私は頷いた。
「はい。あの、お客様は、お時間は大丈夫なんですか?」
煉獄さんはぷっ、と笑った。
「俺は煉獄杏寿郎だ。君の名は?」
「私は、小野 妹子 です」
煉獄さんは、目を見開いて言った。
「遣隋使か!!すごいな!!」