第10章 ※ 二人だけのプール
私がおずおずと言うと、煉獄さんは明るく言った。
「それなら大丈夫だ!宇髄先生は教えるのも上手いし、なんと言っても君には俺がついている!!もし泳げなくても、手取り足取り教えるし、問題ないだろう!!!」
わっはっは、という笑い声が聞こえてきそうな程、明るい声で煉獄さんは言った。
「…でもぉ…。」
私はしぶった。
「君と泳ぎたいんだ。可愛い妹子ちゃんが学園のプールで泳ぐ姿を見たいと思うのは、俺の我儘かな。」
急に、煉獄さんは艶っぽい声になった。
その言葉に、元々プールが好きな私は、だんだんやる気が出てきた。
水の中に入ると、ストレスが無くなる感じがするする!
「分かりました。杏寿郎さん、明日ですね。一緒に泳ぎましょう!」
「本当か!ありがとう!では水着を用意しておいてくれ!楽しみにしてる。
では今日もお仕事頑張って!」
水着!!!忘れてた!!水着!!
「…ちょっ、杏寿郎さん!水着がっ!!」
と私が慌てて話そうとしたときには、電話は切れてた。
…非常にまずい…。
学校のプールで泳ぐ用の水着は持ってない事を忘れていた。
買いに行く暇もない。
今年の夏に買ったあの水着を出してくる他なさそうだった。
深まりゆく秋…。
そして食欲の秋…。
煉獄さんと一緒にご飯を食べに行く事も増え、職場ではお菓子の味見をしたり、食べる事が大好きな私は最近、身体が前よりムッチリとしてきたような気がする。
以前はスッキリと穿けていたスキニージーンズがキツくなってきた気がするのは気のせいだろうか。それに伴い、ブラも少しキツくなって来たような。
Eカップ寄りのDだったけど、Eカップになりそうだ。
私は、ダイエットしないとな…と朝ごはんを食べながら思った。
「妹子ちゃん、これを味見してみてくれる?…女性からの正直な意見を聞かせてもらえないかな。」
午前中に、悲鳴嶼さんが試作中の林檎のパイ、ミルフィーユ・オー・ポンムをお皿に乗せて持ってきてくれた。
「うわあ!!美味しそう!!いただきまーす。」
パクリと食べる。サクサクのバター香る香ばしいパイの生地と、カスタードクリーム、カルバドスの香りのするシャキッとした林檎…。
「んーっ!美味しいです!パイ生地がサクサクというか、ザクザクなのが、たまりません!女性はきっと大好きだと思います!」