第9章 煉獄さんと煉獄杏寿郎さん
起きあがってベッドの上でしばらく泣いてしまった。
愛子さんの喜びを、私も夢の中で同じように体験していた。
夢なのにリアルで、まるで自分の過去の映像を見せられているような、はっきりとした夢だった。
ただ、何故か涙が溢れてくる。
私が見た場面では、煉獄杏寿郎さんが愛子さんに結婚を申し込んで、二人が幸せになろうとしている所で目が覚めた。
あの後はどうなったのだろう。
ただの夢かもしれない。だけど続きが気になる夢だった。
私が見た煉獄杏寿郎さんは、とても素敵な人だった。
…鬼狩り様だったか、腰に迫力ある刀を帯刀していて、歩き方や身のこなしが現代の人とは違う気がした。
隙がなくて、身体から強いパワーを発散しているような、強さを感じる人だった。
煉獄さんと双子のように似ていて、声や目の感じや笑った顔も良く似ていた。ただ、煉獄杏寿郎さんは命懸けの任務を背負っているからか、煉獄さんよりももっと刹那を生きている人、という感じがした。
上手く言えないけど…。
煉獄さんは自分の中に、煉獄杏寿郎さんの記憶があると言っていた。煉獄さんと煉獄杏寿郎さんは、ほぼ同一人物と言って良い程に似ている。
これが意味する事は…何だろう。
私はベッドの横にある藤のチェストの引き出しを開けて、小さなノートを取り出した。
記憶が新しいうちに、見た夢の内容を書いておく。
気になる夢だったから忘れたくなかった。
夢は目覚めた瞬間から忘れていく事が多いもの。
夢中でノートに書いてから、今何時なのかと時計を見たら5時だった。
今日は水曜日でお店がある。
あと30分だけベッドの上でゆっくりしてから起きよう。
横たわりながら考える。
煉獄さんはまだ寝ているのかな?
夢で見た煉獄杏寿郎さんと、煉獄さんが私の中で重なる。
煉獄さんと同じ位、夢で見た煉獄杏寿郎さんの事も、私は好きになってしまっていた。