第11章 してやりたい
【心操人使side】
「何かしてやりたいって思っても、それは相手が望んでいることなのか分からないんです」
そう言うと相澤先生は俺の顔を見て、しばらく俺の表情を伺っていた。
毎日恒例の相澤先生との特訓の合間、
相澤先生に話の流れでそう零してしまった。
「俺は個性のせいで怖い奴って思われがちだし…、相手は嫌なんじゃないかなって」
自分でそう言って、色んなことを思い出す。
俺を怖がるやつ、俺と会話したがらないやつ…
そりゃそうだ、
だって俺は…
そこまで考えていると、ふいに頭を撫でられた。
「えっ?」
突然のことに驚いて相澤先生を見ると、先生はこちらを見ない。
ただ、黙って俺の頭を雑に撫でた。
しばらくすると先生は口を開く。
「お前の言っていることは正しい。人の望んでいる事と俺たちがやってやれることは同じじゃないからな」
そう言って撫でていた手を離し、俺の顔を見た。
「だけど、それが悪い事とは限らない。してほしい事を素直に言えないやつは沢山いる。心操がしてやりたいと思った気持ちを信じてもいいと俺は思うよ」
俺が…やりたいと思った気持ち…
「特に幻想はその典型だからな、お前の気持ちも分かる」
そう言って先生はやれやれと笑った。
「え、俺が幻想をですか?」
「違うのか」
「ちが……くないです」
そう言うと先生はにやりと笑った。
ああ、この人には勝てないなと思った。
「そう言えば、あれ買ったのか?サポーター」
「ああ、おすすめしてくれたやつですね、まだですよ」
「手首が痛いと言ってたろ、早めに買いに行けよ」
「はい、明日買いに行きますよ」
俺がそう言うと先生は満足そうな顔をした。