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嘘つきのヒーロー

第9章 友だち


【幻想叶side】

「ふっざけんじゃねえよ!いい加減にしろ!!」

爆豪の怒鳴り声が辺りに響く。



心操と連絡先を交換してから数日、
私は日に日に調子を崩していった。





私を見ていた不審者はあの日から不定期に現れた。
私に何かするわけではない、何を話すわけではない。

だけど確かに窓の外から私を見ている。
あの気味の悪い目で……



そうなるとあいつが現れない日ですら眠ることはできない。
カーテンを閉めても安心することはできない。

だけど心操に連絡は一度もしなかった。





睡眠不足と常に身を締め付ける緊張は、私の調子を容赦なく崩していく。





「ごめん爆豪」

私がそう言って頭を下げると爆豪は舌打ちをした。


「謝るなら最初から失敗するなよ、邪魔してえのか?」

そう言われ顔を上げると爆豪は怒りに満ちた顔をしていた。


今日の演習、私のせいで負けたんだ。爆豪が怒るのも分かる。
何といえばいいのか分からず黙っていると切島が声をかける。




「おいそんなに怒鳴るなって、幻想もわざとじゃないだろ」

「…ッるせえよ!中途半端な奴は要らねえよ!!」

そう言うと爆豪はどこかに行ってしまった。



「幻想、あんまり気にするなよ爆豪はああいうやつだからさ」

切島はそう言って私の肩を叩いた
だけど私の心が晴れることはない



今日の演習で負けたのは私のミスが原因だ。
こんなんじゃだめだ、しっかりしないといけないのに。

悔しさと情けなさで身体に力が入っていく




すると背中を優しく誰かに撫でられた。

「叶ちゃん大丈夫?」

振り向くと梅雨ちゃんとお茶子ちゃんが心配そうに私を見ていた。



「爆豪くんのことはあんまり気にしなくていいと思うよ、失敗なんて誰でもするから」

そう言ってお茶子ちゃんは私の背中をさすってくれる。


強張っている身体にその手はとても暖かくて、
優しい二人の顔を見ていると涙が出そうだった。
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